東條英機が首相だった1941年、アメリカは日本をいじめていた。
日本はもっと我慢するべきだったかもしれない。
小泉純一郎が首相だった2001年、アメリカは日本をいじめていた。
日本はもっと反発するべきだったかもしれない。
以下、年代のアバウトな表である。アバウトだが何が発生したのかはよくわかる。
色のついたところは親中派、あるいは反米派である。アメリカに都合が悪い人物である。さて、1989年、冷戦が崩壊した。世界はアメリカ幕府の支配するところとなった。
アメリカは、政府機構内部では既にドイツおよび日本にターゲットを定めていたはずだが、大統領が共和党のブッシュ父であり、分別のある政治家だったので日本へのプレッシャーはさほどではなかった。
しかし1993年1月、民主党のクリントン大統領になってから風向きが大いに変わった。日本を虐めだした。当時日本は宮澤内閣だったのだが、宮澤内閣末期のマスコミの首相批判は、ほぼモリカケの時の安倍首相と同じであった。若手議員だった石破茂が大喜びで首相に意見をねじ込んでいたのが記憶に残っている。
結局宮澤内閣が破れ、細川内閣が成立した。背景に居たのは強大な政治力を持つ小沢一郎である。小沢の背後にはアメリカが居た。しかし総理である細川は米国からの独立を指向していた。よって1年で倒れた。
羽田内閣は2か月で消滅、
村山、橋本、小渕はさのみ親米ではなく、森は反米ではなかったが、(その一点だけこの人物の政治家として本物の所なのだが)日露交渉を熱心にやった。クリントン時代、日本の政権は異常に短命である。CIAが全世界の政権転覆にエネルギーを費やしてきたと言われるが、日本においては(田中角栄のロッキード事件からその噂はあったが)クリントン時代から活発化したのである。
やがて森の派閥の小泉に政権は移り、その時アメリカ大統領はブッシュⅡであった。小泉は考えた。自分の政治勢力を長期化させるには、アメリカに思いっきり迎合するしかない。都合の良いことに共和党の大統領である。会話が成立する。そこでなりふり構わず、日本の国益をバンバン捨ててアメリカにすり寄った。おかげで中曽根以来の長期政権が維持出来た。
しかし、不測の事態が発生した。中国が力をつけすぎたのである。小沢はそのころ親中派に鞍替えしていた。彼によって親中派の鳩山内閣が成立してしまった。さすがにこれは、アメリカにとって最悪の事態である。私の見立てではこの時、小沢嫌いの財務省がアメリカ勢力と完全に手を結び、国内親中派を潰してゆくシフトが完成した。財務省が本格的に狂ったのも、だいたいこの辺りであろう。
第二次安部政権は、「戦後レジュームからの脱却」をうたっていた。ようは独立志向である。通貨発行権を行使するかわりに、(核兵器がなく、軍事的能力に限界があるものだから)世界中を飛び回って各国首脳と会談をして、国際社会における日本の地位を高めて乗り切ろうとした。幸か不幸か、当時の大統領オバマも、次の大統領のトランプも、まともな会話能力を持っていない人物であって、会話可能な安倍晋三を世界中の首脳が喜んで迎え入れた。
がしかし、少々安倍の会話能力は高すぎたようである。安部外交のクライマックスはイラン訪問なのだが、大成功すぎて内閣も動揺していた。無論アメリカにとっては、最悪の事態である。安部は結局暗殺される。安部本人が想像していた以上に、世界はオバマやトランプの会話能力の低さに困り果てていたのである。ジョー・バイデンに至っては会話能力どころか発話能力すら危ぶまれる始末であった。
さてここまでのアメリカの対日政策の流れを見てみよう。
日本の支配国はアメリカである。当然日本は独立したい。独立するのに方法が二つあって、自力と他力である。自力が難しいから田中角栄の時に中国に接近した。アメリカはこれを咎めてロッキード事件を起こした。
冷戦が終了し、アメリカの主な敵は日本とドイツになった。実は冷戦という構造の時もアメリカの主な敵は日本とドイツだったのがそれはここでは一旦置く。
クリントン時代、日本を弾圧して中国を成長させた。それ自体は成功した。困った日本は小泉政権の時に、全てを失うより部分的に失った方がマシだと思い、対米従属を強化し、いくつもの利益を手放してそれ以上の弾圧を避ける方向に向かった。小泉=竹中のラインは日本を売り渡した連中として悪く言われるが、逆に従属しなかったらどうなっていたか。アメリカ経済を追い抜いた時点で、アメリカ大統領は泣きながら、日本に三発目の核兵器を発射したはずである。それがいかに非人道的かを理解しながらも、アメリカの覇権を終わらせるわけにはゆかないのである。
がしかし、それでも中国の拡大は止まらなかった。親中派の鳩山内閣が成立した。アメリカは全力で潰して、安倍晋三の第二次政権を迎え入れた。が、これまた問題が発生した。安部の国際的な人気が高すぎた。結局安倍は凶弾に倒れるが、暗殺の現場の状況がJFK暗殺の現場に酷似していると思っているのは、私だけでは無いだろう。
ここに至って鈍いアメリカ人も、ようやく事態の本質を理解できたようである。日本と中国を競らせるとか、日本政界に手を突っ込んで都合の良い政権を作るとか、いくらそんな事をしていても無駄なのである。というかアメリカにとって有害なのである。だから段々国力が落ちている。手を引くべきだ。Make America Great Again、つまりトランプは既にアメリカが偉大ではないと気づいているのである。
それで、とりあえずは自分たちが育ててきたモンスター、財務省を落とそうとしている、と私には見える。財務省に対するデモ、これは過去には考えられなかった事例だからである。アメリカの政権がそれを許容しているとしか考えられない。
田中角栄もロッキードの際、「アメリカと東大にやられた」と言ったらしい。外国権力といっても、日本のエスタブリッシュメントと結びつかないとなにも出来ない。角栄時代もそれが「東大」だったが、ここ近年の場合は「東大経済学部」になっただけである。と考えると、個々の学者だの役所だのをやり玉に挙げても、抜本解決にはならないということに気づく。
実は戦前戦中の陸軍・海軍は物凄いエリート集団だった。当時の陸軍大学、海軍大学に入れる連中は、勉強して入ったのではない。部隊に勤務していて、ほとんど勉強時間が取れない中で試験に合格した連中である。つまり地頭がすこぶる良い。その地頭がすこぶる良い連中を集めて、さらにガリガリに勉強させて、そして作った軍隊が、想像を絶するバカ作戦を敢行しつづけて結局敗戦した。繰り返すが彼らの頭脳は優秀であり、そして勤務態度も非常に良い連中だった。
財務省、経済学者も同様であって、非常に頭がよく、熱心に勉強し、熱心に勤務する。そして生み出される結果が、いずれも同じ棄民政策である。私の祖父の弟も、ニューギニア戦線で死亡している。親戚一同「恐らく餓死だ」と言っている。多分戦闘なんかほぼしていない。なんのために兵器を持たせて、わざわざ南の島へ運んで餓死させて貴重な労働力を消滅させたのか。ただの自滅なのだが、平成~令和の経済政策もほぼ同じである。
考えれば、日本における科挙制、官僚制は明治以来のものである。歴史が浅い。文化としての練り込みが足りない。だからエリート官僚たちは定期的に、経験の蓄積の浅さによる授業料の支払を強要される。それが敗戦であり、財務省へのデモである。解決策はあるのか?
私はあると思っている。手前味噌で恐縮だが、それが読み解きだと思っている。エリートはたいてい、教養がない。知識はあってもそれを有機化出来ていない。短期間で急速に知識を詰め込まなければならないのだから、それは実は、仕方が無いことなのである。詰め込んだ知識を自分の中で、時間をかけてゆっくり考えてゆく種のようなものがあれば、地頭がよく、態度が良いのだから、その壁を突破できる。
軍部が文芸に無教養だったのは、よく知られていることである。官僚が無教養だということも、実は20年くらい前には良く言われていた。でも彼らは地頭と態度が良く、小説を読めと言われれば完読できるし(ちなみに私は完読できない小説がほとんどである)、表面的になら中身を理解出来ることも出来る。問題は深読みが出来ないというより、深読みという世界があることを知らないだけである。深読みという世界があることを知りさえすれば、ほぼそれだけで自分で自分の知識を「読んで」ゆくことが可能になる。もちろん、例えば経済学徒が文芸作品を深読みする必要は、全くない。深読みという世界さえ知ればよいのだ、それも出来るだけ若いうちに。
冷戦崩壊でマルクス経済学が破れ、近代経済学が勝利したのだが、それは国家の勝敗に連動していただけで、近代経済学もマル経と同じくただのイデオロギーであり、かならず嘘がひそむという「読み」が、経済学者たちに決定的に足りなかったと思う。これは国際政治学者にも共通している欠落である。
「しかしソ連の経済学が正しくなかったというのは事実では」
という声が聞こえてくる。読み解き家に言わせれば、ソ連の失敗の原因は経済学の失敗ではない。ドストエフスキーを十分読解できなかったことによる。ドストエフスキーはアンチ社会主義だから、ソヴィエト政府は嫌ったのである。現在はかなり咀嚼できたようで、ロシアは大国として復活している。
大日本帝国陸海軍の失敗の原因は漱石を十分読解できなかったことによるし、小泉服従(自体は仕方が無い部分があるが)による大きすぎるダメージの原因は太宰三島を読解できなかったことによる。
なんか手前勝手な結論すぎて、前段で書いたことの説得力が無くなった気がする。ほとんど読み解き原理主義者だ。それでも、私という人間がいかに絶望的で自爆的で盲目的で救済不能な読み解き変態であるかの説明にはなっている気はする。いや、そんな説明したくなかったのだが。