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2016年11月29日火曜日

日本映画

最近日本映画は好調です。
なぜ好調か。製作サイドの努力をうんぬんする声が高いのですが、
実は単純な話です。
テレビの魅力が弱まっただけです。

実は1950年代、日本映画は世界最高水準でした。
小津の「東京物語」が1953年
溝口の「近松物語」が1954年
黒澤の「七人の侍」も1954年
巨人がそろいぶみしていました。

しかし1959年、皇太子様ご成婚の影響で、家庭に一気にテレビが普及しまして
その余波を受けて、日本映画は長期没落にはまりました。
ところが平成に入って以降、テレビの面白さが長期没落しています。
それで映画館に人が戻ってきたと。

あとレンタルDVDが100円というのは大きいですね。


2014年11月28日金曜日

小津安二郎「秋刀魚の味」解読


小津の最後の作品、「秋刀魚の味」は、
おそらく彼の最高傑作ではないかと思う。
小津嫌いの私でも認めざるを得ないほどに、優れている。

この作品を傑作たらしめているのは、
バーでの場面である。
この場面のみ解読する。
それだけでおそらく、
小津映画の全てを解読したことになるであろうことを期待している。

以下役名ではなく、俳優名で説明する。

笠智衆はラーメン屋で偶然昔の部下、加東大介に再会する。
「艦長、お久しぶりです」
笠智衆は朝風という駆逐艦の館長、加東は乗組員だった。

二人はバーで酒を飲みながら旧交を温める。
「艦長、どうして日本は負けちゃったんですかねえ」
「さあねえ、だけど負けて逆によかったじゃないか」

そこにバーのマダム、岸田今日子が帰ってくる。
岸田は笠智衆の亡き妻ににている、という劇中設定になっている。
岸田は髪が濡れ、頭にタオルを巻いている。

「あらいらっしゃい。わたし銭湯行っていたのよ。
お酌しましょうか?
いつものあれ、かけましょうか?」

あれとは、軍艦マーチのレコードである。
岸田がレコードをかけると、
加東は体を揺らし、敬礼をする。
「艦長もやってくださいよ」
笠智衆もつきあって敬礼する。
岸田もつきあって敬礼する。
加東は調子にのって、狭いバーの店内で行進しはじめる。

するとどうだろう、
画面には確かに狭いバーの店内しか映していないのに、
視聴者の脳内に別の映像が浮かび上がってくるのである。
広大な海洋に波を切って進む、連合艦隊が。

それは、どんな特撮映画もかなわない、美しい連合艦隊の姿である。
あたりまえである、おのおのが頭に描くもっとも美しい姿なのだから、
他人の描く絵がかなうわけがない。
芸術の要点が想像力の喚起だとすれば、
映画の、最高に芸術的になった瞬間だろうと思う。

さて、解読である。
駆逐艦朝風は1944年に、魚雷攻撃を受けて沈没している。
当時の習慣として、船が沈没して艦長が生存したとは考えがたい。
笠智衆は死者である可能性が大きい。
それと話している加東も、やはり死者であろう。

そう考えれば、岸田今日子を銭湯帰りという設定にした理由も了解できる。
彼女はたったいま、十数年間浸かっていた水の中から上がってきたのである。

小津安二郎は、兵隊として招集もされたし、
除隊後も映画製作のために外地にも行き、
終戦はシンガポールで迎えている。
戦争を全身で体験した人物である。

コミカルな軍艦マーチのバーのシーンの裏には、
連合艦隊の雄姿シーンが隠れており、そのさらに裏には、
死者に対する合掌のような、祈りのシーンが隠れている。




2014年2月25日火曜日

メタレベル

メタレベルという言い方か正しいかどうか実は自信が無いのだが、
表面的な意味以上の意味を、作品全体で表現していることがある。

宮崎駿の映画で列挙する

千と千尋の神かくし(貨幣論・文明論)
ハウルの動く城(ネット社会と動力としての原子エネルギー)
崖の下のポニョ(遺伝子工学)
風立ちぬ(キリスト教、とくにヨハネのモクジロクへの異議申し立て)


小津安二郎ならば
東京物語(時間の静止と時間の再開)
浮雲(利得と損失のバランス)
秋刀魚の味(戦争(荒事)と恋愛(和事)の同一化)

すべての作品がそのような答えがあるわけではないし、
答えがあるから上等な作品というわけでもないが、
そのように読める作品も存在しており、
そのような作品はそのように読まなければならない。


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2014年1月8日水曜日

映画雑感・仁義なき東京物語

深作欣二監督「仁義なき戦い」の特徴を列挙する。

1、舞台は広島県(呉市および広島市)
2、全て荒々しいことばの発音。一本調子。
3、下から見上げるようなアングル
4、山森親分、夫婦仲が大変良い
5、親と子(舎弟)の、家族の物語である



小津安二郎「尾道物語」の特徴を列挙する

1、舞台は広島県(尾道市)と東京
2、全てやたら上品なせりふ。一本調子。
3、下から見上げるようなアングル
4、周吉と妻、夫婦仲が大変良い
5、親と子(含む義理の娘)の、家族の物語である

したがって、仁義なきシリーズは、
東京物語を下敷きにした映画だと言える。