/* 目次のデザイン */ .toc { background: #f9f9f9; border: 1px solid #ccc; padding: 15px; margin-bottom: 20px; } .toc h3 { margin-top: 0; font-size: 18px; } .toc ul { margin: 0; padding-left: 20px; }

2026年8月21日金曜日

エグベルト・J・バッカー(Egbert J. Bakker) 『The Meaning of Meat and the Structure of the Odyssey(肉の意味とオデュッセイアの構造)』

本書は、『オデュッセイア』における「肉の消費」を主要テーマとし、オデュッセウスの仲間たちが犯す過ちと、故郷イタケで求婚者たちが繰り広げる略奪的な饗宴との構造的な共鳴を、人類学、民話学、当時の農業史などを交えて分析した先駆的な学術書です。

ご提案する報告書は、以下の詳細な構成(各章のタイトル、小見出し、議論の要点)で作成する予定です。

---

### **作成予定の「詳細な章立て表」の構成案**

*   **プロローグ:歌のための食糧 (Prologue: food for song)**
    *   古代ギリシアにおける「歌」と「饗宴・肉」の密接な結びつき
    *   求婚者たちによるイタケの富(家畜)の破壊行為と、オデュッセウスの仲間たちの過ちの対比
    *   3つの主要エピソード(キクロプス、キルケー、太陽神の牛)にみる「動物の主」との遭遇
*   **第1章:エポスとアオイデー (Epos and aoidē)**
    *   **Epos and aoidē (エポスとアオイデー)**:一次語り手(詩人)と二次語り手(主人公オデュッセウス)のヒエラルキーの融合、プロローグのテーマの変奏
    *   **Just like an aoidos (アオイドスのように)**:オデュッセウスによる「死者呼び出し(ネキュイア)」におけるカタログ詩(列伝詩)のパフォーマンス、詩人と英雄のライバル関係と融合
*   **第2章:探求としてのノストス(帰郷) (Nostos as quest)**
    *   **Nostos and quest (帰郷と探求)**:帰郷(ノストス)をたんなる「到着」ではなく「生存をかけた探求(クエスト)」として捉え直す視点
    *   **Variations on a theme (テーマの変奏)**:ロシア民話学者プロップの機能分析やサウス・スラブの口承詩パターンを適用し、キルケーやキクロプスの物語にみる構造パターンの反復・圧縮・入れ子構造を解説
    *   **From quest to return (探求から帰郷へ)**:魔術的アイテム(レイコテアのヴェールやアテネの変身)や語りかけ(クレタ嘘話)を媒介とした、イタケ帰還後の「探求パターン」の継続
*   **第3章:神話と実生活における肉 (Meat in myth and life)**
    *   **Heroic feasting (英雄たちの饗宴)**:『イリアス』における肉の分配儀礼(dais:デイス)と名誉の役割(geras)
    *   **The dangers of the dais (デイスの危険性)**:饗宴に潜む「足止め・忘却」の危険と、イタケでのデイスの変質
    *   **Dining to destroy (破壊のための食事)**:求婚者たちによるイタケの資産の「食い潰し(ausfressen)」、略奪行為としての饗宴
    *   **Meat in the real world (現実世界における肉)**:アルカイック期のギリシアにおける牧畜の現実、肉や家畜(特に牛)の稀少性と神聖性
*   **第4章:狩人と牧者について (Of hunters and herders)**
    *   **The Suitors and the Cyclops (求婚者たちとキクロプス)**:イタケの求婚者たちの暴力・傲慢さとキクロプスの野蛮さのパラレル
    *   **The Master of Animals (動物の主)**:ポリュペモスを野生の家畜の「守護者(Master of Animals)」とする旧石器時代的探求神話の構造
    *   **Unlimited meats, innumerable goats (無限の肉、無数の山羊)**:無人島での野生の獲物の「無限の豊かさ」
    *   **The limits of wealth (富の限界)**:オデュッセウスのイタケの財産(有限で数えられた家畜)と求婚者によるその損耗
    *   **Unlimited meats, numbered sheep (無限の肉、数えられた羊)**:キクロプスの所有する「数えられた」羊の略奪と、それを無限の資源のように消費する過ち
    *   **The master’s return (主人の帰還)**:オデュッセウスがイタケで求婚者たちを血祭りにあげる際、かつて自分を閉じ込めた「キクロプス(主)」の役割へと反転・同化するアイロニー
*   **第5章:夜明けの地での饗宴 (Feasting in the land of the dawn)**
    *   **Hunting to survive (生き残るための狩猟)**:キルケーの島(アイアイエー島)での大鹿の狩猟と、肉の生物学的生存への還元
    *   **The inclusive society (包括的な社会)**:南米アマゾンのトゥカーノ族などの人類学比較からみる、人間と動物(豚)の境界線の崩壊と「肉を食す不安」
    *   **The yearlong feast (1年におよぶ饗宴)**:キルケーの元での1年間の忘却と飽食、死と再生のサイクル
    *   **Rethinking the Necyia (ネキュイアの再考)**:キルケーの指示による「死の国への旅」が、儀礼的な死と二度目の誕生を意味する重要性
    *   **The feast of the ghosts (亡霊たちの饗宴)**:豚飼いエウマイオス(キルケーの分身)の存在や、求婚者たちの最後の晩餐における異様なトランス状態(血に染まった肉の幻視)の神話的共鳴
*   **第6章:太陽の復讐 (The revenge of the Sun)**
    *   **The festival of the New Moon (新月の祭り)**:イタケでの虐殺がアポロンの新月の祭りの日に起こるという時間的・天文学的背景
    *   **Eating in the land of the Sun (太陽の地での食事)**:ヘリオスの聖なる牛(7群×50頭=350頭=太陰暦の1年の日数)の不妊の不死性と、それを消費することの不可逆的な大罪(アタスサリアー)
    *   **Archery in the light of the Sun (太陽の光の中での弓術)**:すべてを見通す「太陽の視線」と、太陽神・アポロンの代理としてのオデュッセウスの射手としての復讐
*   **第7章:ポセイドンの正義 (The justice of Poseidon)**
    *   **The prayer and the sacrifice (祈りと犠牲)**:ポリュペモスの祈りとオデュッセウスの犠牲(牡羊)の拒絶。神とのコミュニケーションの失敗
    *   **Zeus and Poseidon (ゼウスとポセイドン)**:ゼウスの「啓蒙的な正義(自己責任論)」と、ポセイドンの「暴力的な私怨」という2つの神の意思の競合がもたらす悲劇
    *   **Justice for Odysseus (オデュッセウスにとっての正義)**:部下を全員失い、イタケに社会・政治・人口的な大損害をもたらしたオデュッセウスの英雄的曖昧さ
*   **第8章:胃袋(ガーステール)を記憶すること (Remembering the gastēr)**
    *   **Bellies and beggars (胃袋と乞食)**:英雄的な「気概(thumos)」と対比される「胃袋(gastēr)」の不名誉な役割、オデュッセウスの乞食の変装のシンボリズム
    *   **Bastards and burning ones (私生児と燃える者)**:クレタ嘘話で「アイトーン(燃える者)」と自称するオデュッセウスの、持たざる「二男・私生児」としての知恵(mētis)の追求
    *   **Gastēr and thumos (胃袋とテュモス)**:『イリアス』のサルペドンの獅子の比喩との公式的な対比。肉体の要求と英雄精神の融合
    *   **Gastēr and menos (胃袋とメノス)**:『イリアス』第19巻でのアキレウスとの食事を巡る論争、食糧がもたらす武人の「活力(menos)」
    *   **Remembering the gastēr (胃袋を記憶すること)**:胃袋を「思い出す(mnēsasthai)」という行為が持つ、忘却(lēthē)を伴うパフォーマンス的かつ叙事詩的な活力の充填
    *   **Odysseus and Achilles (オデュッセウスとアキレウス)**:イタケでの求婚者虐殺の局面において、和解を拒絶し敵を血祭りにあげる「新たなアキレウス」としてオデュッセウスが立ち上がる叙事詩的競争
*   **エピローグ:「公式間性(インターフォーミュラリティ)」について (Epilogue: on “interformularity”)**
    *   口承詩・公式システムにおける「意図的な繰り返し」や「暗喩」の認知的意義
    *   **公式間性(Interformularity)のスケール**:たんなる即興のための自動化された表現から、特定の場面(アキレウスの足元での哀願など)を想起させる「極めて具体的で相互指示的な引用」への連続体

太字のところをインフォグラフィック化します

 


 




前回のエグベルト・J・バッカーの記事よりはこっちのほうがまとまっていますね。構成読みって感じでもないですが、でも古典に対してゴリゴリ研究する態度は立派ですね。







エグベルト・J・バッカー(Egbert J. Bakker) 『言葉としての詩:ホメロス叙事詩における口承性と語り(Poetry in Speech: Orality and Homeric Discourse)』

 本書(Egbert J. Bakker 著 **"Poetry in Speech: Orality and Homeric Discourse"**)の**詳細な章立て表(目次および各章の構成・概要)**は以下の通りです。

本書は、ホメロスの叙事詩(『イリアス』『オデュッセイア』)を「書かれたテクスト」としてではなく、日常の「話し言葉(Speech)」や「パフォーマンス」の観点から再評価し、定型表現(フォーミュラ)や韻律がどのように話し言葉の認知的・レトリック的特徴から発展(スタイライズ)したかを解き明かしています。

---

### 📘 全体構成および詳細な章立て表

*   **Foreword (序文)** — Gregory Nagy (グレゴリー・ナジ) [p. vii / 533]
    *   日常の話し言葉がどのように特別な文脈で「詩」や「歌」へと整えられていくか、その認知的・言語学的アプローチを導入する。
*   **Acknowledgments (謝辞)** [p. xiii / 533]
*   **Introduction (導入)** [p. 1 / 533]
    *   ホメロス研究における口頭定型詩理論(パリー=ロード・モデル)を批判的に検証し、テクストを「話し言葉の書き写し(トランスクリプト)」として読み解くアプローチを提示する。

---

#### **PART I: PERSPECTIVES (第1部:パースペクティブ / 視点)** [p. 5 / 533]

*   **Chapter 1: The Construction of Orality (第1章:口頭性の構築)** [p. 7 / 533]
    *   *Traditional Style and Homeric Kunstsprache (伝統的文体とホメロスの「人工言語」)*
    *   *From Poetry to Speech (詩から話し言葉へ)*
    *   **【概要】**:「口頭性(Orality)」を書記文化の「不在」として定義する従来の偏見を批判。物理的な媒体としての「媒体的口頭性」と、思考様式としての「概念的口頭性」を区別し、ホメロスの詩を「口頭詩」ではなく日常の話し言葉が洗練された「特別な話し言葉(Special Speech)」として再定義する。

*   **Chapter 2: The Writing of Homer (第2章:ホメロスの書記)** [p. 18 / 533]
    *   *Speech and Text (話し言葉とテクスト)*
    *   *The Interdependence of Text and Performance (テクストとパフォーマンスの相互依存)*
    *   **【概要】**:ホメロスが文字に記録された歴史的文脈を検証。書記を単なる作曲の補助ではなく、パフォーマンスを再演・保存するための「媒体の移行(ミディアム・シフト)」として捉え、文字テクストと声による朗唱(Vocality / 声性)の相互依存関係を論じる。

---

#### **PART II: SPEECH (第2部:話し言葉)** [p. 33 / 533]

*   **Chapter 3: Consciousness and Cognition (第3章:意識と認知)** [p. 35 / 533]
    *   *Periodic and Unperiodic Style (周期的な文体と非周期的な文体)*
    *   *Apposition and Parataxis (同格と並列)*
    *   *Consciousness and Cognition (意識と認知)*
    *   **【概要】**:アリストテレスが提唱した「数珠つなぎの文体(lexis eiromene)」を再検討し、ホメロスの並列的(パラタクティス)な文体が、人間の短期記憶や意識のフォーカスの認知的制限(ウォレス・チェイフの「イントネーション・ユニット」理論)に根ざしていることを実証する。

*   **Chapter 4: The Syntax of Movement (第4章:移動の統語論)** [p. 54 / 533]
    *   *Progression and Continuation (進行と継続)*
    *   *Inclusion (包含)*
    *   *Progression, Dialogism, and Enargeia (進行、対話性、エナルゲイア[真に迫る鮮明さ])*
    *   **【概要】**:「並列(パラタクシス)」を、語り手が言論の道を進む「進行」や「継続」のプロセスとして捉え直す。文脈を繋ぐ助詞(接続詞)である *de*(進行の標識)や *kai*(統合・包含の標識)の認知的な働きを分析する。

*   **Chapter 5: Homeric Framings (第5章:ホメロス的フレーミング)** [p. 86 / 533]
    *   *Close-Up and Addition (クローズアップと追加)*
    *   *Frames and Goals (フレームと目標)*
    *   *The Syntax of Activation (活性化の統語論)*
    *   *Explanation and Epic Regression (説明と叙事詩的退行)*
    *   *Ring Composition and the Grammar of Discourse (リング・コンポジション[環状構成]と談話の文法)*
    *   *Syntax and Suprasyntax: Some Conclusions (統語論と超統語論:結論)*
    *   **【概要】**:全体的な予告(フレーム)から具体的な詳細(追加・クローズアップ)へと移行するホメロスの語り口を分析。因果関係を示す *gar* の役割や、語りの「フレーム」と「目標」を強固に連結する「環状構成(リング・コンポジション)」の機能について言語学的に解明する。

---

#### **PART III: SPECIAL SPEECH (第3部:特別な話し言葉)** [p. 123 / 533]

*   **Chapter 6: Rhythm and Rhetoric (第6章:リズムとレトリック)** [p. 125 / 533]
    *   *Meter, Number, and Periodic Style (韻律、数、周期的な文体)*
    *   *Rhythm in Speech (話し言葉におけるリズム)*
    *   *From Cicero to Homer (キケロからホメロスへ)*
    *   *Metrical versus Syntactic Periods (韻律的周期対統語的周期)*
    *   **【概要】**:ホメロスのダクティロス・ヘクサメロス(長短格六歩格)という「韻律(メーター)」が、話し言葉の自然なリズムの標準化・規則化からいかに生起したかを分析。古典期のキケロやゴルギアスが用いた散文の周期性(ピリオド)と、叙事詩の韻律的周期性を比較する。

*   **Chapter 7: Epithets and Epic Epiphany (第7章:形容語句と叙事詩的顕現[エピファニー])** [p. 156 / 533]
    *   *Making, Using, and Doing (つくる、使う、行う)*
    *   *The Meaning of Noun-Epithet Formulas (名詞・形容語句定型表現の意味)*
    *   *Epiphanies and Their Stagings (顕現とその演出[ステージング])*
    *   *Staging and Heroic Names (演出[ステージング]と英雄の名前)*
    *   *Plotting in the Odyssey (『オデュッセイア』におけるプロッティング)*
    *   **【概要】**:名詞・形容語句定型表現(例:「多難なる気高きオデュッセウス」など)の儀礼的役割を解明。これらは単なる音節合わせの埋め草ではなく、パフォーマンスの場にその英雄や神をリアルに立ち上がらせる「エピファニー(顕現)」の役割を果たし、その舞台を整える「ステージング(演出)の定型表現」と密接に結びついていることを論じる。

*   **Chapter 8: The Grammar of Poetry (第8章:詩の文法)** [p. 184 / 533]
    *   *Beyond Staging: Routinization (演出を超えて:日常習慣化/ルーチン化)*
    *   *Reanalysis (再分析)*
    *   *Nuclei and Their Peripheries (核と周辺)*
    *   **【概要】**:形容語句の歴史的発展を3つの段階(①儀礼的な顕現をコード化する formative 段階、②文脈に依存せず結合する routinization 段階、③修飾語が「周辺部」として再分析され韻律調整として機能する deroutinization 段階)に分けて説明。名詞という「核(ニュークリアス)」と形容語句という「周辺(ペリフェリー)」の関係性から、ホメロスの詩的文法システムを統合的に提示する。

---

*   **Speech and Text: A Conclusion (話し言葉とテクスト:結論)** [p. 207 / 533]
    *   口頭性と記述のあいだで成立したホメロスのテクストが、いかに話し言葉の生命力(イントネーションと語りの進行)を保持し続けたかを総括する。

以下太字のところをインフォグラフィック化しました

 


 








原文読まずに判断して申し訳ないのですが、あんまりまとまっていませんね。次行きましょう。










2026年8月19日水曜日

ローラン・メネ(Roland Meynet, 1939) 「聖書修辞学論考」(A Treatise on Biblical Rhetoric)

 ローラン・メネ(Roland Meynet, 1939年生まれ)は、フランス出身のイエズス会士、聖書学者、言語学者です。

聖書をはじめとするセム語族文学(ヘブライ語聖書、新約聖書、初期アラビア語文学、クルアーン)のテキスト構成を分析する「セム的修辞学分析(Rhetorical Analysis / Biblical Rhetoric)」の世界的権威・体系化の第一人者として知られています。

生涯と学歴

    1939年: フランス・リヨン近郊に生まれる。

    イエズス会入会と神学・哲学教育:

        カトリックのイエズス会(Society of Jesus)に入会し、哲学および神学を修める。

    高等研究実習院(EPHE)およびソルボンヌ大学:

        言語学、古代セム語(ヘブライ語、アラビア語、アラム語)、古典文献学を修める。

        1979年にソルボンヌ大学(パリ第4大学)にて博士号(Doctorat d'État)を取得。

主要な教育・研究歴(職歴)

    ベイルート・聖ヨセフ大学(Université Saint-Joseph / レバノン)

        1970年代から長年にわたり教鞭を執る。中東の現地でアラビア語文学やイスラーム文献、シリア語文献に直接触れ、ギリシャ・ラテン的修辞学とは異なる「セム語族固有のテキスト構成規則」の着想を深める。

    教皇庁立グレゴリアン大学(Pontifical Gregorian University / ローマ)

        聖書神学・聖書解釈学の教授(Professor of Biblical Theology)を長任。

        聖書神学部長(Dean of the Faculty of Theology)を歴任。

        現在は名誉教授。

    国際セム的修辞学会(Rhetorica Semitica / RBS: International Society for the Study of Biblical and Semitic Rhetoric)

        創設者・主宰者。世界中の研究者を集め、セム語文学の修辞構造に関する国際学会や研究叢書(Retorica Biblica e Semitica シリーズ)を統括。

理論的業績と「メネ派」のテキスト構成論
メネの最大の功績は、ロバート・ロウスやニルス・ルンド、メアリー・ダグラスらが指摘してきた並行法・キアスムス・同心円構造を、曖昧な直感に頼らない「厳密な8段階の階層的分析プロトコル」として学術的に完成させた点にあります。

1. ギリシャ修辞学とセム修辞学の決定的な違い

    ギリシャ・西洋的修辞学(論理展開型):

        「序論 $\rightarrow$ 本論 $\rightarrow$ 結論」という直線的(リニア)な論理展開。

    セム的修辞学(空間・対称配置型):

        テキストを要素の「対比・対称・反復」によって空間的に組織化する。

2. メネが定式化した構成の基本3類型
メネは、テキストの最小単位から作品全体に至るすべてのレベルで、以下の3つの関係性がフラクタル(入れ子状)に現れると論じました。

    二重構造(Bipartite / 並行・対照):

        直接並行($A-B \rightarrow A'-B'$)または対照($A$ と 非$A$)。

    三重構造(Tripartite / 3連反復・発展):

        $A-B-C$、または最初と最後が枠を作り中央が発展する形式。

    同心円・交差構造(Concentric / Chiasmus):

        $A-B-C-B'-A'$ または $A-B-C-X-C'-B'-A'$(中央の $X$ が焦点)。

3. 適用範囲の広範性
聖書テキスト(詩篇、預言書、福音書、パウロ書簡)にとどまらず、イスラームの聖典『クルアーン』のスーラ(章)やアラブ古典散文の構成にも同一の規則が適用されていることを実証しました。

主な代表的著書

    『L'analyse rhétorique: Une nouvelle méthode pour comprendre la Bible』(1989年)

    『Treatise on Biblical Rhetoric』(2012年、英語改訂版)

        セム的修辞学の方法論・分析手順・用語体系を網羅した記念碑的大著。

    『The Bible in the Light of Semitic Rhetoric』(2014年)

    『Calling on the Name of the Lord: A Biblical Theology of Prayer』

    『The Twelve Minor Prophets: A Rhetorical Analysis』(2016年)

        十二小預言書全体が1つの壮大な修辞構造を持つことを解明したモノグラフ。

 

 

ここでは「 A Treatise on Biblical Rhetoric 」のインフォグラフィックを掲載します

 

聖書修辞学に関する手引書『A Treatise on Biblical Rhetoric』の導入部分に示されている、本書の**詳細な章立て表**を整理しました。

本書は、導入である**「序論」**、発見の歴史を扱う**「第1章」**、そして**「構成」「文脈」「解釈」の3つの部(各部4つの章で構成)**、さらに今後の方向性を示す**「最終章(展望)」**から組み立てられています。

---

### 📖 『聖書修辞学』詳細章立て表

#### **序論 (Introduction)**
*   **聖書修辞学の手引書(Treatise)が必要な理由**
    *   手引書としての体系的・教育的な意図
    *   古典修辞学(規範的)と聖書修辞学(記述的)の違い
    *   聖書は「雑多な断片の集まり」ではなく「精緻に構成されたもの」であるという視点
*   **聖書修辞学の本質的な2つの特徴**
    1.  **二元性 (Binarity)**:言語・文法レベル(絶対不定詞、名詞や命令文の並置など)、談話レベル(詩の並行句、対になるたとえ話や奇跡など)、聖書全体レベル(「deuterosis / 要約・要請としての反復」)
    2.  **並置 (Parataxis)**:言語・文法レベル(二重語、名詞文など)、談話レベル(論理的接続詞を用いない並列、福音書や格言の連なり)、聖書全体レベル(旧約と新約の関係)

---

#### **本編の構成**

##### **第1章:歴史 (History)**
*   聖書修辞学(セム・スタイル分析)の発見とこれまでの研究史について。

##### **第1部:構成 (Composition)**
*   **第2章:テキスト配列の連続的レベル (Successive levels of arrangement of texts)**
    *   自律的ではないレベル(メンバー、セグメント、ピース、パート)から、自律的なレベル(パッセージ/ペリコーペ、シーケンス、セクション、書物)、およびその中間レベルの定義と体系。
*   **第3章:構成のパターン・図式 (Composition figures)**
    *   全体的な構成図式(並行構造、鏡面対称、同心円構造)と、部分的な構成要素(冒頭語、末尾語、両極語、中間語、中央語など)の提示。
*   **第4章:書き換えの規則 (Rules for re-writing)**
    *   テキストの構成を視覚的に分かりやすく整理・可視化するための、タイポグラフィや配置に関する正確な書き換えルール。

##### **第2部:文脈 (Context)**
*   **第5章:統合文脈 / イントラテキスト (Intratext)**
    *   テキスト単位と、それらが統合されて形成される高次レベルの単位との関係。文脈(コンテキスト)という概念を科学的に定義する。
*   **第6章:範列文脈 / インターテキスト (Intertext)**
    *   他の聖書の書物との引用、参照、暗示による関係性。個別のパッセージだけでなく、全体を貫くシーケンスレベルのつながりについて。
*   **第7章:同心円的構成の中心 (The centre of concentric constructions)**
    *   同心円構造の中心に位置する「問い」「引用」「たとえ話」が、構造全体の読解の鍵(キーストーン)として果たす役割。

##### **第3部:解釈 (Interpretation)**
*   **第8章:解釈に至る前段階の問い (Questions leading up to interpretation)**
    *   本文批評や句読法、テキスト要素の順序や反復を尊重した翻訳の確立基準について。
*   **第9章:解釈における構成評価の助け / 5つの解釈規則 (Five hermeneutic rules)**
    *   構成の評価が解釈に与える影響。以下の**「5つの解釈規則」**を提示する。
        1.  相違の探究 (look for the difference)
        2.  類似の探究 (look for the similarity)
        3.  中心からの出発 (start from the center)
        4.  赤い糸の追跡 (follow the red thread)
        5.  糸の交差 (cross the threads)
*   **第10章:理解を深めるインターテキスト的連関 (Intertextual links)**
    *   インターテキスト的関係を2つに分類して考察。
        1.  「証言(witness)」:対象テキストを補強する関係
        2.  「成就(accomplishment)」:互いを照らし出し補完し合う関係
*   **第11章:賜物としての解釈 (The free gift of interpretation)**
    *   分析技術の限界と本質について。「ぶどう園の労働者のたとえ話」を引いて、最終的なテキスト理解(解釈)は人間の努力だけでなく、無償で与えられる「主からの賜物(恵み)」であることを語る。

##### **最終章:展望 (Perspective)**
*   今後の研究が歩むべき道や、将来に向けた学問的展望を示す。

---

*(※注:著者の説明では「各部は4つの章からなる」とされていますが、本文の紹介では第1部・第2部がそれぞれ3つの章、第3部が4つの章(第8章〜第11章)として具体的にリストアップされており、章の分類に若干のズレが見られます。上記はソーステキストの記述に忠実に再現したものです。)*

(章立てとインフォグラフィックのタイトルは一致しません。しかし順番通りです)

 


 


 

 




 


今まで見た中ではこれが一番優れていますね。イエズス会もたいしたもんです。しかしギリシャ的、セム的だけでなく中国でも日本でも、と考えていただくとより議論が広がりますね。こちらが聖書の知識が乏しいのが問題なのですが。

最後の画像の、単なる「手法」から「必須の工程」へ、というのは全く同感です。テキスト理解に構成解析は、それをどの程度重視するかは別として、工程として(雑でもよいので)必要なものなのです。原文も翻訳も読んでませんが、感触的にどうも私自身と非常に近いものを感じます。