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2018年6月15日金曜日

倭寇と安倍外交

昔ある女性がスタッフとして働きに来てくれていた。Mという苗字だった。かなり破天荒なタイプで、ほかのスタッフは戸惑っていた。話を聞いてみると、どうもかなりアクティブな家系のようだった。たとえばお父さんは、自衛隊でイラクに行っていた。その父も遠く海外に行った経験がある。そのさらに父も。そして本人も、ある日ヨーロッパに留学に旅立ってうちを辞職した。有能で頼りにしていたから大変困った。

後で判明したのだが、Mというのは松浦家の家臣の家系だった。松浦というのは、九州北部の豪族=大名である。司馬遼太郎の「韃靼疾風録」が、江戸時代初期の松浦家の内容だからお読みいただけるとわかりやすい。永く北九州に存在している氏族で、蒙古襲来の際には最前線で奮闘していた。元をたどれば、魏志倭人伝の末盧国である。耶馬台国のころから松浦族は北九州に蟠踞して、史書にその名を残しているのである。

末盧族=松浦族はつまり、交易族である。倭人伝のころから大陸と日本の交易の中継地点にあり、あるものはヤマトに、あるものは大陸に長躯し、大胆な貿易を行っていた。のちに彼らは倭寇となり、満州や華南、あるものは東南アジアまで足を伸ばし、江戸時代にいたって大名になって落ち着いていったが、その家臣の子孫はやはり活動性を維持しており、たまたま私のところにスタッフとしてきてくれていた、のである。

ところが安倍総理の先祖も松浦なのである。安倍家の遠祖は蝦夷の安倍宗任らしいのだが、前九年の役で北九州に配流された際に、松浦家に入ったらしい。と考えると、安倍総理の外交活動の超人的、非日本人的な特徴が、私としてはすべて納得できる。

倭寇は、粗末な船に、粗末な武器を積み込んで、大胆に遠距離を航行して、目的地に乗り込むや活動、それも迅速に終了して、風のように立ち去る。モタモタとしてどんくさい日本人的メンタリティーではなく、どこか騎馬民族のような機動性を持っているのが倭寇である。いわゆる農村日本人の行動パターンではない。そかしこれはこれで、(魏志倭人伝のころから連綿と続く)日本人のキャラの一種なのである。農村日本人が好きか嫌いかはともかくとして、歴史的正統性を持っているキャラである。

米朝首脳会談の直前になって、突然政府は「拉致問題は日本自身が解決しなければならない」と言い出した。アメリカの活動の正当性を後押しするという意味で、外交的に決定的に重要な発言であった。たとえば拉致交渉は決裂、自衛隊が強制的に被害者救出に北朝鮮に出撃、それをバックアップするために米軍が北に空爆、という展開になっても私は驚かない。「憲法違反では?」いや、かつてのスタッフMさんは、そういう考え方はしない。Mさんなら、普通にパラシュート部隊を派遣して強制的に救出、という結論を導き出すだずである。安倍さんとMさんは、同一人物ではないが、同一種族である。疾風怒濤族とでも呼ぶべき一族である。