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2023年10月23日月曜日

田中角栄としてのネタニヤフ

 ゼニゲバキャラ群

田中角栄がなぜロッキード事件で有罪になったか。田中自体がゼニゲバキャラであったのは間違いない。しかしそれと、有罪になることは、直接の関係はない。説としては二つあり、

1、日中友好がまずかった。アメリカの先を越してしまった。それがキッシンジャーなどの逆鱗に触れてしまった。

2、オイルショックで困って北海油田などに手を伸ばしていた。それがオイルメジャーの逆鱗に触れた

である。いずれにせよ国際問題である。アメリカがらみである。そしてなぜか東京地検には大量の証拠が流れ込み、田中は有罪になった。似たような経過をたどった指導者が今一人いる。タイのタクシンである。

2001 政権獲得

2006 クーデター・亡命

2008 有罪判決・空港占拠

2010 バンコク騒乱

2023 帰国、拘束も恩赦

タクシンも角栄と同じく、ゼニゲバキャラであったのは間違いない。しかし問題はそこではなく、タクシンが対立していたのが王党派であり、現王家はアメリカを後ろ盾として権威を成立させているところにあった。先代のラーマ9世は奇跡的な名君であったから、アメリカの作戦は想定以上にうまくいった。一人でタイ一国を持ち上げていた。ところがラーマ9世が高齢化で動けなくなってから問題が頻発しだした。そこに台頭したのがタクシンである。首相在任中から中国との関連は噂されていたが、実際どうだったのかは今でもわからない。はっきりしているのは王党派とアメリカがタクシンを嫌ったこと、検察、司法が敵にまわったことである。

ところでベンヤミン・ネタニヤフも検察、司法を敵にまわしている。ネタニヤフが角栄、タクシンと同じく、ゼニゲバキャラであったのは間違いない。しかしそれは問題ではない。というかユダヤ人である以上、ゼニゲバキャラでないほうが正統性を欠く。それよりもアメリカから嫌われていることが問題なのである。

アメリカの世界支配は、IMF。世界銀行の金融と、軍事力と、CIAの暗殺、騒乱惹起力と、そして検察司法の制御からなっている。日本もタイも同じようなやられかたをした。イスラエルもそのはずである。


イスラエルという国の存在意義

そもそも何のためにイスラエルという国は存在するか。アングロサクソンの世界支配の為である。ではなぜあの場所なのか。無論中近東が石油の産地だからである。石油を押さえれば、産業を制することができる。

かつて石油を止められてアメリカに戦争をしかけた国があった。日本である。アメリカにとって覇権に挑戦した国は日本とドイツなのである。ソヴィエト=ロシアでもなく、中国でもない。世界の現状はそれとはかなり異なってきているのだが、アメリカ自身に第二次世界大戦ほどの大きなイベントが発生していない以上、アメリカの政治体制は第二次世界大戦時の体制から抜け出せない。実際CIAも、前身のOSSは1942年に発足している。アメリカ政府、軍産複合体がなんらかの活動をするとき、自動的に、惰性的に、無意識的に日独を制御する方向になるはずである。

そしてアメリカというかアングロサクソンは、常に分割統治をする。イスラエルにアラブを攻撃させる、のみならずアラブにも武器資金を提供して、イスラエルに対抗させうる力を与える。状態が永続するかぎりにおいて、イスラエルもアラブも互いに戦うばかりで、アメリカに逆らおうとはしない。アメリカは常に安全な場所から外国を支配し続けられる。

しかし今日ではこのマッチポンプ戦略をイスラエルもアラブも十分に認識している。50年前、情報が不十分な時代ならば、マッチポンプ戦略は通用した。だが今日の高度情報化社会で、真面目にアラブと戦うイスラエル人も、真面目にイスラエルと戦うアラブ人も、激減しているはずである。ワンパターンすぎるからである。ばかばかしいからである。それでも戦乱は発生した。なぜか。

ネタニヤフは、10/7のハマスの攻撃を知っていた。「パールハーバーだ」という人も居る。パールハーバーならばネタニヤフはルーズベルトの立場である。ルーズベルトは第二次世界大戦参戦、とくにヨーロッパ戦線参戦のために、真珠湾の米兵を見殺しにした。多くのイスラエル国民を見殺しにして、ネタニヤフはいったい何を狙っているのか。

独立戦争

物事を考えていて奇抜な結論に到達したとき、人はだれでも口にするのを逡巡する。私だって逡巡する。しかしその逡巡の度合いがどうも私は、人より少なすぎるようである。

言い訳はさておいて、一般的に言って、植民地が独立戦争を計画するならば、宗主国の軍事力が最も弱まった時を狙うしかない。アメリカはウクライナ戦争で敗北した。

今現在アメリカ空母が地中海に居る。海兵隊も同乗しているようである。しかしアメリカはイスラエルを十分バックアップする力が、現時点ではない。かつハマス、ヒズボラを援助して戦争を盛り上げて演出する力もない。つまり今までのアメリカと違って、支配力を見せつけることができない。明らかに独立のチャンスである。カタールの高級ホテルに居るハマスの幹部だけは、今までの状態が長続きすることを祈っているかもしれない。あるいはヒズボラなどもそうかもしれない。しかし中近東各国政府のアメリカに対する見方は、イスラエルと同様のはずである。マッチポンプにいつまでも付き合う気はない。

というわけで、言いにくい結論が出た。ハマスの攻撃はハマスの主体的意思だが、それを黙認し、反撃を開始したネタニヤフは、この戦争をアメリカからの独立戦争にするつもりでいる。他のアラブ諸国も、おそらくそれを理解している。理解していながら、表面的にはイスラエルを非難している。

アメリカの出方

となると、これからのアメリカの出方が非常に難しい。ネタニヤフが難しくしているから当たり前なのだが。「パールハーバー」ならば、アメリカは当然イスラエルの味方をしなければならない。しかしイスラエルは意図的に、残虐行為を連発している。残虐行為をする連中を強く支援するのは流石に難しい。と同時に、指を咥えて見ているだけでは、ウクライナ戦争で失墜したアメリカの権威が、さらに低下する。現状空母を地中海に置いている。置いているが現状なにも軍事行動をしていないのは、なにかをするというより、軍事力を近接地域に存在させることによって、イスラエルとアラブ諸国に、無言の圧力を加えたいからである。逆に言えば無言の圧力以外の手段が、現状取るのが難しい。その圧力は、アラブにかけているわけではない。イスラエルにかけている。だからイスラエルは残虐行為を繰り返す。

ウクライナ戦争以前のアメリカならば、ギリギリまでイスラエルを弱らせて、弱ったところでイスラエル救助に向かう、という方法でイスラエルを再び制御下に置くことが可能だった。今は難しい。ロシアが大々的にコミットした場合、米軍が直接活動すると命取りになる。全アラブ+ロシア+イラン+トルコを相手に戦えば、まず敗ける。議会はそんな戦争を許さない。自分がアメリカ政府に居ると考えても、どうすればよいのか見当もつかない