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2014年2月27日木曜日

風立ちぬ・解説24

カプローニ「君はピラミッドのある世界とピラミッドのない世界、どちらが好きかね」
次郎「ピラミッドですか」
カプローニ「空を飛びたいという人間の夢は呪われた夢でもある」

岡田斗司夫はこのピラミッドを、美しさの象徴としている。
悪い解釈では無い。
しかしよりよい解釈は、
「理想の探求」である。


ピラミッドというシンボルの元ネタはタルコフスキーの映画、
「ノスタルジア」にある。

宗教的人類救済を志すドミニコという登場人物が、
ローマの広場で叫ぶ。

「誰かがピラミッド建設を叫ばなければならない、
完成できなくてもいい、
願いをもつことが肝心だ、
魂をあらゆる面で広げるのだ」

ドミニコはその後自分の体にガソリンをかけて火をつけ、
火達磨になった上で高いところから落ちて、
のた打ち回って死ぬ。
ここで言うピラミッドは、理想という意味であり、
そのようにとってはじめて、
「風立ちぬ」のカプローニの言葉の意味がきれいにつながる。



カプローニ「君は理想の探求のある世界と理想の探求のない世界、どちらが好きかね」
次郎「理想の探求ですか」
カプローニ「空を飛びたいという理想の探求は、呪われた探求でもある」

なぜ呪われているか。
それはヨハネの黙示録に書いてある。
天上、地上、地下と世界を分別し、
天上に上ろうと希求する気持ちが、
すなわち天からの墜落を発生させる。
上らなきゃ落ちないのは当然である。

黙示録には「落ちる」というイメージが頻発するが、
「風立ちぬ」にも墜落が頻発し、
ドミニコのように落っこちながら、火達磨になって滅んでゆくのである。

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2014年2月25日火曜日

メタレベル

メタレベルという言い方か正しいかどうか実は自信が無いのだが、
表面的な意味以上の意味を、作品全体で表現していることがある。

宮崎駿の映画で列挙する

千と千尋の神かくし(貨幣論・文明論)
ハウルの動く城(ネット社会と動力としての原子エネルギー)
崖の下のポニョ(遺伝子工学)
風立ちぬ(キリスト教、とくにヨハネのモクジロクへの異議申し立て)


小津安二郎ならば
東京物語(時間の静止と時間の再開)
浮雲(利得と損失のバランス)
秋刀魚の味(戦争(荒事)と恋愛(和事)の同一化)

すべての作品がそのような答えがあるわけではないし、
答えがあるから上等な作品というわけでもないが、
そのように読める作品も存在しており、
そのような作品はそのように読まなければならない。


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2014年2月21日金曜日

女長嶋の誕生

大量の人間が、
昨日の浅田真央の演技に泣いたようである。

才能はピカ一。
安定感は無い。
タイトルは取れない。
失敗するときは大失敗。
成功するときは大成功。

そして最も重要なことは、
なにも考えないこと。
本人はあれこれ考えているつもりかもしれないが、
客観的に見れば、なにも考えていない。

日本社会はそれなりに人間関係疲れる社会だと思うが、
そんななかで浅田のような、なにも考えないキャラが出現すると、
素直に感情移入できて楽しめるようだ。
どうもみなさんの泣き方が、
オグリキャップのラストランの泣き方に近い。


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