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2013年8月11日日曜日

含むネタバレ 風立ちぬ・解説10

言葉にしづらいが、言葉にしてみる。

菜穂子が油を吐いたとき、次郎は死を観念したに相違ない。当時の日本のエンジン開発能力では、結核で油を吐いたらまず墜落なのである。でもそのエンジンでも結果を残さなければならないから、祝言を挙げた。機体そのものは花のように美しく、何度も口付けをして、愛した。

含むネタバレ 風立ちぬ・解説9

理解出来ない人が大量発生しているのは、原因は宮崎にある。宮崎がここで試みたのは、単に上手い映画、面白い作品などではない。人類数千年の物語の歴史に、新たな方法を付け加えようとしているのである。全く新しい物語の語り方を、開発したのである。似たような試みは、細田守監督「おおかみこどもの雨と雪」でもなされていた。その影響もあるであろう。いずれにせよ私たちは、大変な時代に生きているようである。今現在の日本のアニメ文化はとほうもない高みに到達している。宮崎駿が後世トルストイよりも偉大な芸術家とたたえられても、私は驚かない。

含むネタバレ 風立ちぬ・解説8

宮崎駿は特攻隊を賛美している、「それはまるで、菜穂子のように、けなげで、美しかった」と。同時に女性も賛美している、「それはまるで、特攻隊のように勇敢で、まっすぐで、自己犠牲的である」と。
物語には和事と荒事二つの路線がある。恋愛ものと戦争もの、詩経と書経、万葉集と日本書紀、源氏物語と平家物語、小津安二郎と黒澤明。宮崎は恐るべきことに、その二つを同時に描いた。トルストイが戦争と平和でやったような、交互サンドイッチ方式ではなく、より根源的な方法で。映画鑑賞後じわじわと感慨がよみがえってくるの、そのためである。