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2025年6月3日火曜日

蛍の光

 

マーラー交響曲第五番第四楽章「アダージェット」で始まり、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」前奏曲で終わる、蛍の光。

編曲はコミカルだけど、こんなに良い蛍の光は初めて聞きました。

曲をプレゼントされているのはダニエル・ハーディングという指揮者で、主席指揮者としての最後のコンサートで、楽団員から演奏のプレゼントをもらったわけです。楽団員から愛されているのですね。

私も好きな指揮者で、どの演奏も良いというわけではないのですが、人柄がよいのはよくわかる。スピード的表現に優れていて、攻めの姿勢を持っている。もっと世俗性があればカラヤン的な成功をしたと思うのですが、世俗性はない。だから人気はそれほどでもない。でも愛されているのはよくわかります。

クラシック業界は完全に伝統芸能化しております。指揮者には「枠」がある。過去の人達の後継枠がある程度決まっています。

フルトヴェングラー枠(催眠術系)として

クルレンツィス


クレンペラー枠(土木建築設計家系)として
マケラ

ワルター枠(優美人畜無害系)として
ネゼ=セガン

カルロス・クライバー枠、として、

キリル・ペトレンコ
市川團十郎のごとく芸風が何代も続く体制になっています。もちろんそれぞれの枠に間に何人も挟まります。クレンペラー枠が一番多いですかね。テンシュテットやテイトが入ります。レパートリーにさほど変動がなく、過去の録音が繰り返し聞かれる業界では、まあ歌舞伎のような体制になりますね。
最後のクライバー・ペトレンコ枠というのはドイツ系のソフトで美しいメロディーの歌わせ方ができる得難い才能でして、イタリア系の鮮烈な歌わせ方の名人は結構居るのですが、ドイツ的なそれはそんなに存在していない。だから希少価値を買われてベルリンフィルの常任指揮者に抜擢されましたが、まさかクライバーの勤労意欲の薄弱さまで受け継いでいるとはだれも想像していませんでした。


2025年6月1日日曜日

ピエロとピエロ使い

 1年以上前の田中宇さんの記事ですが、

ピエロにされていたヌーランドが辞任

は良記事です。この方の記事はいつも、全面賛成されるかたは誰もいないと思いますが、全面否定できる人も誰もいないでしょう。こういうのが高度情報化以降の有益な情報でして、鵜呑みにされるべき情報というより、読んであれこれ洞察されるべき情報ですね。

ヌーランドがピエロならば、フォンデアライエンもまあピエロでしょうね。マクロンは自分でピエロを演じながらピエロを使える部分もある器用なひとです。典型的なピエロは日本の国際政治学者さんたちですね。「世の中ピエロとピエロ使いが居る」ということさえ認識できていない。それで国際政治を論じる。気の毒ですが全部無駄です。どうも学者育成の基礎的カリキュラムが間違っていたのではないか。人材のクオリティ-が少々揃い過ぎていると思います。

さて今回の萩生田さんと深田さんの件は、誰がピエロで誰がピエロ使いか、です。巻き込まれるのが嫌なので、私からは判断は差し控えます。しかし洞察してゆけば面白いかと思います。

映画「ゴッドファーザー」の素晴らしいところはそこでして、全体は「バルジーニが黒幕だと気づくまでの物語」です。ビトーは自身が狙撃され、長男も殺されてようやく、その結論に到達しました。敵を間違えていたから被害が甚大だった。



つまりこれは洞察のドラマであり、誰がピエロで誰がピエロ使いかを探るドラマです。タッタリアも、感情的になって蜂の巣になるソニーも、結局二人ともピエロでした。



そして重要なのはそのドラマが映画史上最高レベルの作品だ、ということです。世界の首脳、世界の政治家はこの映画を間違いなく「楽しめる」。

日本の首脳も、そういう洞察力はだいたい悪くないです。しかし一般人はどうもそのレベルにはまだ到達できていない方が多いようです。でもそのレベルの方が増えなければ、現在の世界状況を乗り切るのは難しいかもしれません。

冷たい言い方ですが、私は今回の件は楽しんで経過を観察したいと思っています。誰がいつ洞察を開始して、いつ気づくのか。気づいてどうするのか。人々はどう反応するのか。



2025年5月31日土曜日

ウクライナ戦争

 私:極超音速兵器を西側が開発できるのはいつくらいいなりそうですか?

Geminiさん

極超音速兵器の開発競争は、米中露を中心に激化しており、西側諸国も開発を加速させています。しかし、現時点での実戦配備の状況を見ると、ロシアと中国が先行していると言われています。

現在の状況と西側諸国の目標:

  • ロシアと中国の先行: ロシアはすでに「キンジャール」や「ジルコン」といった極超音速ミサイルを実戦配備し、ウクライナ戦争でも使用したと報じられています。中国も「DF-ZF(東風-ZF)」を搭載した「DF-17(東風-17)」などの極超音速滑空体(HGV)を開発・配備していると見られています。
  • 西側諸国の開発状況: 米国は複数の極超音速兵器プログラムを進めており、陸軍の「LRHW(Long-Range Hypersonic Weapon、通称Dark Eagle)」や海軍の「CPS(Conventional Prompt Strike)」などが代表的です。これらの兵器は2020年代半ばの実戦配備を目指しています。
    • アメリカ陸軍: 2023年を目標としていましたが、試験失敗などによりスケジュールがずれ込んでいる模様です。
    • アメリカ海軍: ズムウォルト級駆逐艦やバージニア級攻撃型原子力潜水艦への搭載が計画されており、2024会計年度や2028会計年度の配備が予定されています。
    • アメリカ空軍: かつてはAGM-183 ARRW(Air-launched Rapid Response Weapon)の開発を進めていましたが、試験失敗が続き、計画見直しを迫られています。
  • NATO全体としての取り組み: NATOは、ロシアや中国の極超音速兵器の脅威に対抗するため、統合防空ミサイル防衛(IAMD)政策を公表するなど、防空能力の強化に力を入れています。個別の加盟国が開発を進める形が主ですが、共同開発の動きも見られます(例:日英伊の次期戦闘機開発では、極超音速兵器の搭載も視野に入れています)。

西側が極超音速兵器を「実戦配備できる」時期の目安:

「実戦配備」の定義にもよりますが、限定的な能力を持つものも含めると、

  • 2020年代半ば(現在~2025年頃): 米国の一部の極超音速兵器が、限定的ながらも部隊に配備される可能性があります。しかし、本格的な運用や大量配備にはまだ時間がかかりそうです。
  • 2020年代後半(2026年~2030年頃): 各種の試験が成功し、生産体制が確立されていけば、より多くの極超音速兵器が配備され、本格的な運用が始まる可能性が高まります。
  • 2030年代以降: 複数種類の極超音速兵器が開発・配備され、防衛網の整備も進むことで、より広範な能力が確立されることが期待されます。

課題:

西側諸国が極超音速兵器の開発で直面している主な課題は以下の通りです。

  • 技術的な難易度: 極超音速での飛行には、極度の熱や圧力に耐える素材、スクラムジェットエンジンなどの推進システム、高度な誘導制御技術など、非常に高度な技術が求められます。
  • 試験の失敗: 特に米国のプログラムでは、試験失敗が相次ぎ、開発スケジュールに遅れが生じているケースが見られます。
  • コスト: 開発・生産には莫大な費用がかかるため、予算的な制約も課題となります。
  • 迎撃能力の開発: 開発と並行して、敵の極超音速兵器を迎撃する能力の開発も喫緊の課題となっていますが、これもまた非常に困難な技術的挑戦です。

まとめ:

西側諸国は極超音速兵器の開発を最優先事項の一つとして進めており、特に米国は2020年代半ばから後半にかけて、複数のシステムを実戦配備する目標を掲げています。しかし、技術的な困難や試験の遅れなどもあり、ロシアや中国に追いつき、本格的な優位性を確立するには、もう少し時間が必要となる見込みです。質的な面での優位性を維持しつつ、いかに迅速に量産体制を確立できるかが、今後の焦点となるでしょう。


私:となりますと、当面ロシア優位は続くのでは無いですか?ロシア優位が続くと中国がロシア寄りになる可能性も高まる。戦略はあくまで期待値の競争です。西側に状況をひっくり返す手段が無い以上、この戦役は終わっているように見えるのですが


Geminiさん:ご指摘の通り、現在の状況と極超音速兵器の開発スケジュールを考慮すると、ロシアの軍事的な優位性、特に物量と一部の先進兵器(極超音速兵器など)の面で、当面続く可能性は高いと考えられます。そして、この優位が続くことは、中国がロシアへの支援をさらに拡大するインセンティブとなり得ます。


中国の戦略的判断とロシア優位の強化

中国は、国際関係において「勝ち馬」に乗る傾向があり、自国の国益を最大化することを最優先します。ロシアがウクライナで優位を確立し続けるならば、中国は以下の理由でロシアへの支援を強化する可能性が高いでしょう。

  • 多極化世界の実現: 米国の一極支配に対抗し、より多極的な世界秩序を構築するという中国の目標と、ロシアのウクライナ侵攻は一致します。ロシアの勝利は、この目標達成を後押しするでしょう。
  • 米国の牽制: ロシアの軍事行動は、西側の注意と資源をウクライナに集中させ、結果的に中国が最も重視する台湾問題など、アジア太平洋地域への米国の関与を分散させる効果があります。
  • 経済的利益: ロシアは西側からの制裁で中国への依存度を高めており、中国は安価なエネルギー資源や原材料を確保し、ロシア市場での影響力を拡大する機会を得ています。

中国がロシアへの支援を強める場合、それは単に経済的な支援に留まらず、軍事転用可能なデュアルユース製品の供給拡大や、将来的には兵器の供給に踏み切る可能性も否定できません。そうなれば、ロシアの軍需生産能力は飛躍的に向上し、西側のウクライナ支援をはるかに上回る物量で、戦局をロシア有利に傾けるでしょう。


西側の「状況をひっくり返す手段」の現状

西側諸国がこの状況を覆すための手段は、現在進行形で模索されていますが、即効性のある決定打は限られているのが実情です。

  1. 軍需生産能力の抜本的増強: 西側は砲弾やミサイルの生産を加速させていますが、長年の「平和の配当」で縮小された軍需産業の再活性化には時間がかかります。ロシアがすでに戦時経済体制に移行していることを考えると、生産量の差を埋めるのは容易ではありません。
  2. 質的優位性の維持と拡大: 西側の精密誘導兵器や先進的な航空機、情報戦能力などは、ロシアの物量を補う上で重要です。しかし、ウクライナの戦場では、高度な兵器であっても消耗が激しく、供給が追いつかない現状があります。また、ロシアも西側兵器の弱点分析や対抗策の開発を進めています。
  3. 新たな技術の投入: AI、無人機、サイバー戦などの分野での技術革新は、戦局を動かす可能性を秘めています。しかし、これらの技術が実戦でどの程度のインパクトを持つかは未知数であり、開発から大規模な配備、そして戦術の確立には時間が必要です。
  4. ロシア国内の不安定化: 制裁の長期化や人的損失の拡大が、ロシア国内の政治的・経済的な不安定化を招き、戦争継続能力に影響を与える可能性はあります。しかし、現在のところ、プーチン政権の盤石さは揺らいでいないと見られます。
  5. 外交的・経済的圧力: 中国が本格的にロシアへの軍事支援に踏み切った場合、西側が中国に対して強力な制裁を課すことも考えられます。しかし、これは世界経済に甚大な影響を与えるため、西側も慎重にならざるを得ません。

戦役の行方と「期待値の競争」

おっしゃる通り、戦略とはまさに「期待値の競争」であり、各アクターが描く未来のシナリオが、現在の行動を規定します。

現状の「期待値」を見ると、

  • ロシア側: 物量の優位と中国からの支援拡大、そして西側の生産体制の立ち上がりの遅れを背景に、長期戦でウクライナを疲弊させ、領土的な既成事実を積み重ねることを期待しているでしょう。
  • 中国側: ロシアの優位が続き、米国主導の世界秩序が揺らぐことを期待し、その過程で自国の影響力を拡大しようとするでしょう。
  • 西側(NATO)側: ウクライナの抵抗力を維持しつつ、時間をかけて軍需生産能力を増強し、ロシアの継戦能力を徐々に削いでいくことを期待しています。しかし、この期待値は、ロシアの物量と中国の支援拡大という現実的な課題によって、その実現可能性が厳しく問われています。

西側が状況を「ひっくり返す」ような劇的な展開を生み出す具体的な手段が当面見えにくい以上、この戦役がロシアにとって非常に有利な状況で推移し、その結果としてロシアが一定の成果を収めるというシナリオは、非常に高い蓋然性を持っていると言わざるを得ません。

それは「終わっている」とまで断言できるかは、ウクライナの抵抗力と西側の最終的なコミットメント、そして国際情勢の予期せぬ変化によって左右されますが、少なくとも「西側にとって極めて厳しい状況が続く」という見方は、現実的であると言えるでしょう。