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2019年7月21日日曜日

「ファウスト」追記

「ファウスト」解説【ゲーテ】

時間がかかった。別に完全な解説ではないが、まずある程度の見通しまでは示せたと思う。
戦前は旧制高校でドイツ語が必須だったこともあり、ドイツ文学研究はかなり水準は高かったはずである。
もちろん戦後もレベルは十分高く、現在だって外国文学研究としては見ごたえのあるもののうちの一つだろうと思うが、正直言って、誰も十分「ファウスト」を読めていなかった。それなりに研究所は目を通したから、間違いないと思う。

本文の末尾の有名なフレーズ、
「すべて移ろい行くものは、永遠なるものの比喩にすぎず。
かつて満たされざりしもの、今ここに満たさる。
名状すべからざるもの、ここに遂げられたり。
永遠にして女性的なもの、われらを牽きて昇らしむ。」


「ループ時間が本源的な時間だ。
キリスト教の教義内容不備は整理された。
詳細の直接的記述は危険なので回避するが、
教義への女性の編入を含む内容なのである」

と書き換える、たったそれだけの作業に、やろうとしてから2年間かかった。

誰でも知っていることだが、冒頭の「天上の序曲」は旧約聖書「ヨブ記」を下敷きにしている。
ところがこのヨブ記について、まともな解説が無い。
解説を書いたり読んだりするのはクリスチャンだから、キリスト教の外から考えたものが存在していない。
西洋人も、ゲーテはじめキリスト教からの離脱を色々試みているのだが、
当時から今まで人類文明のイニシアチブは西洋社会が握っているのである。
当然客観的な視点は、今現在まで確立できていない。

実際ヨブ記を読んでみると、当時のユダヤ教の教義的な不備による苦しさが如実に理解できる。
聖典かもしれないが、欠陥のある聖典なのである。
そのことの解説は存在していなかった。
だから自力でまとめた。

「ヨブ記」あらすじ解説【旧約聖書】

また、「ファウスト」最大の難解な場所は、第一巻にも第二巻にも存在する「ワルプルギスの夜」であり、マドマギで端的に表現されているように、これは性的錯乱の祭りなのだが、ゲーテは明らかに「夏の夜の夢」を下敷きにしている。
しかし「夏の夜の夢」のしっかりした解説も、これまた存在していない。
だから自力でやった。

「夏の夜の夢(真夏の夜の夢)」あらすじ解説【シェイクスピア】

で、ようやく「ファウスト」に書かれるわけだが、過去のファイスト研究は明らかに、
ヨブ記の読み解きも、夏の夜の夢の読み解きもやらずに、いきなりファウストを読もうとしている。

これでは無理である。いくら碩学でも無理である。読めるわけがないのである。
その下敷きを理解せずに、ドイツ人学者による「ファウスト研究」のほとんど全部に目を通す、それはそれで作業量的には十分偉いことなのだが、ツボを外している。

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