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2019年4月18日木曜日

機能不全

忘れられていることですが、大日本帝国陸海軍は自前の大学を持っていました。陸軍大学、海軍大学は、軍人の中でも成績優秀者しか入学できず、優等で卒業すればエリート街道が確定していました。しかも頻繁に帝大に聴講に行かされたそうで、ある意味当時の日本の最大の頭脳集団が軍部でした。
敗戦した時、陸軍と海軍の将官が語り合って、片方が「実はうちの大学の授業には、まともな戦術がなかったんだ」というと、相手も「いや、実はうちの大学もそうだった」と答え、「どうしようもない、救いようもない国だ」と詠嘆したそうです。最大の頭脳集団が、内実はそうだった。先生にたいする従順さが裏目にでますね、こういうときは。

遡って考えれば、「林家三代」と言いまして、江戸幕府の官学の林家も林羅山、その子、孫までがまともで、以降はなんの実力もない存在だったようです。徂徠以降大量の経世家が出ましたので、一般の水準としては世界有数です。でも官学としては機能しない。

つまり、官学が機能しないのはわが国のれっきとした伝統であり、それが端的に現れたのがかつての陸軍大学、海軍大学、そして現代の東京大学経済学部だったということです。これは関係者の頭脳が劣っていたのではありません。だったら改善は簡単です。そうではなくて「優秀な頭脳集まりながら、機能しなくなるしくみ」がわが国にはあるのです。これの改善は恐ろしく難しいです。

問題のポイントはおそらく「翻訳」にあります。林羅山はもちろん儒学です。漢文を使います。帝国陸海軍も東京大学も、西洋の文献が重要になります。その際におそらく、本来の思考エンジンである「やまとことば」が若干機能不全になるのだろうと思います。自分に引き付けた話になりますが、精度の高い読み解きは、おそらくこの機能不全の最大の特効薬になるのではないかと、期待しています。

2019年3月16日土曜日

緊縮財政と積極財政

ツイッターでいろんな人とお話させていただいて、だいたい状況把握できました。。この20年の日本の停滞は、どうもアメリカの意思だったようです。財務省と経済学者をピンポイントでコントロールして、停滞を作り出していた。
もっともアメリカが悪い、という気もあんまりないです。アメリカの立場になってみると大変です。運よく日本とドイツに戦争で勝ちましたが、そして勝った瞬間にはよかったのですが、両国が経済で追い上げると手がなくなった。

日本とドイツを押さえつけるシステムとして冷戦が存在していたのですが、それだけでは抑えきれなくなって冷戦を終わらせて、直接押さえつける作戦に出た。そしてそれはそれなりに成功した。
でも経済を押さえつける、というのは不自然な行為ですので、本体のアメリカに無理が広がった。貧富の差が拡大しすぎて、国家として弱体化しすぎた。それをなんとかしようとしているのが、トランプやらMTT勢力だろうと思っています。

安倍さんが上手に立ち回ってくれているおかげで、日本はじわじわとアメリカの押さえつけを解除できている感じですが、ペースは遅いですね。でも仕方がない。本音ではトランプも、日本がうざいはずですから、逆鱗に触れぬように安倍さんとしてもゆっくりやるしか仕方がない。

ブレクジットの本質について納得のゆく議論を見たことがありませんが、現在の私の想像では、イギリスがドイツを押さえつけられなくなったことだろうと思います。直接対決が無理なら引きこもるしか手がない。そしてゆっくりとドイツはアメリカの制御から離脱してゆきます。

ドイツの緊縮財政、評判が悪いのですが、背後にアメリカの意志があると思っています。しかしアメリカの意志をもっても動かせない状況になりつつあります。そのうち積極財政やりだすでしょう。そこらへんが日本も積極財政をできるタイミングです。安倍さんに期待することは、なるべく上手に立ち回ってその時期をできるだけ前に倒していただければ、ということです。