核兵器は物語ほどは危険ではないし、殺傷能力もない。
バイブル、コーラン、資本論、
近くはポルポト、スターリンの例だけで十分であろう。
そしてそれは、それらのテキストが悪いものだったからでもなく、
良くないものだったからでもなく、
大変良いもの、
大変優れたテキストは、多くの人々に伝播し、
社会を巨大な幻想でドライブする。
それらの毒を消す方法はただひとつ、
素晴らしさの源泉を十分解明すること、
それは、批判ではない。批判は多くの場合、
そして今日私達日本人は、素晴らしい物語作家を手にしている。
例えば宮崎駿だが、氏の「千と千尋の神かくし」などは、
観客動員数2300万人である。
その後のテレビ放映、DVD、BRの販売を考えれば、
ほぼ日本人全員が鑑賞していると言ってさしつかえない。
言い換えれば、
私は近年、そのことに気づいた。
今まで日本に’住んでいると思っていたが、
住んでいたのは「ジブリランド」という国で、
昔日本と呼ばれていた場所らしいと気づいた時の驚き!!
そして物語を無毒化するべき役割を背負うはずの映画批評家には、
残念ながらこの大作を解析する力量を持つものがほとんど居ない。
私が昔若かりし頃、
「もののけ姫」あるいは押井の「攻殻機動隊」
ほとんど存在していなかったのである。
甲殻にかんしては当時は一人も居なかった。
ある批評家はいけしゃあしゃあと「よく理解できなかった」
だったら5回見ろ、と言いたくなったが、
宮崎駿のような巨匠の手のひらから一歩も出れない。
元気が良い奴がたまに手のひらの中をグルグル廻っているのが関の
元気の無い奴は手の真ん中でへたり込んでる状態であった。
千と千尋の公開は2001年、
日本は当時からデフレであったのだが、
結局アベノミクス発動によるデフレ改善のこころみまで、
その原因の一端はおそらく、千と千尋の神隠しにある。
「千と千尋の神隠し」はバブル、インフレ、
そこのとに罪は無い。
理念や世界観を元にしなければ、
宮崎駿の経済観は大変幼稚なものであり、
少々でも経済をかじった人間ならば、
簡単に反論ができるようなものでしかない。
「労働価値説?金本位制?
ジブリがスタッフに払うお金も、不換紙幣だよ?」
言ってみれば人畜無害な経済哲学である。
しかし問題なのは、
超人的な演出能力、ジブリスタッフの作画能力、
途方も無い説得力を持つ物語に仕上がっているということであり、
それは大変幸福なことで、
どんな幸運でもメリットだけということはありえない。
巨大すぎるグットラックには、それ相応の影があり、
そのマイナス部分の毒消しをすることを、
分不相応なほどの天才の作品を、私達の社会は享受したあげくに、
十年以上対価を支払わされ続けていた、というのが、
近年の日本経済の真相なのであろう。
デフレの慢性化によって、
日本の経済成長率は低く抑えられ、
中国の高度成長もあって、
安全保障体制が不安定化し、尖閣、沖縄、
なんのことはないカオナシの情けない姿で膨大な人間の生活が危機
そしてくりかえすが、宮崎駿に責任は無い。
作家として最善のものを作った結果、
そこまで考えていちゃなんにもつくれないわけで、
言ってみれば田舎の高校野球のチームに突然ダルビッシュのような
町中熱狂した挙句に仕事がおろそかになって街がさびれる、
腕も折れよと投げまくるダルビッシュさんへの批判はやめていただ
街の人々が正気を取り戻すべき、と私は考えるのである。
正気を取り戻す方法は、ダルビッシュを否定することでも、
それは正気から遠ざかる道である。
唯一の方法は、ダルビッシュを完全に理解し、消化し、
そんなわけで「風立ちぬ」も「おおかみこども’」も途中だが、
千と千尋の神隠しの考察も始める。
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