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2014年7月27日日曜日

去勢と識字率


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%98%E5%AD%97
より
「1443年に朝鮮通信使一行に参加して日本に来た申叔舟は「日本人は男女身分に関わらず全員が字を読み書きする」と記録し、
また幕末期に来日したヴァーシリー・ゴローニンは「日本には読み書き出来ない人間や、祖国の法律を知らない人間は一人もゐない」と述べている」


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日本は昔から識字率が極端に高い。
特に注目すべきは、女性の識字率が高いことである。
こんな国は、世界に無い。


鎌倉以降の日本社会は直系家族で、
直系家族は女性の識字率向上がダイレクトに全体の識字率の向上に影響する社会だから、
日本の識字率の高さの原因は、
「なぜ女性の識字率が高かったのか」という疑問に答えれば、
ほぼ解決する。


「直系家族だったから識字率が高かった」という、
エマニュエル・トッドの説明は説明になっていない。
コリアは直系家族であるが、日韓併合までは識字率は低かった。
直系家族は一旦識字率が上がり始めたら、どんどん上がりやすい社会であるのは確かだろう。
しかし、識字率が上がり始めるかどうかは、又別の要因が介在するはずである。


「平家物語」によって識字率が向上したというのも、
説明になっていない。
日本の女性の識字率の高さは、
遅くとも平安時代には確認できるからである。
王朝女流文学の作品を見よ。


清少納言、紫式部、和泉式部など、
平安時代の宮廷は才女を矢継ぎ早に生産している。
文化というものは上から下にながれるものだから、
平安時代の上流階級の文化、
すなわち女性は読み書きできるのが偉い、という価値観が、
1443年までには十分浸透していたと思われる。


ではなぜ彼女たちが才媛だったか。
彼女たちは、女官なのである。
今日の言い方では官僚なのである。
宮殿があればそこではたらく官僚があるのは当たり前である。


通常、ユーラシアの国々では、
宮殿、特に後宮では宦官を雇用する。
女性も雇用はするが、
事務、運営の主役を担うのは去勢された男性である。
宦官というと馬鹿にされがちだが、
中国では宮廷運営には時に通常の官僚を圧倒するほどの実力を持った集団だった。
しかし、日本には宦官が存在しなかった。

他国では去勢された男性がこなしていた事務仕事を、
日本では女性がこなしていた。
こなしていたせいで、
事務をこなすだけでなく、
力余って王朝のかな文学まで発展させて、
以後女性も読み書きできるのが当然という社会の風潮になったのである。


宦官の存在の前提には、
去勢技術の発達がある。
騎馬民族には必須の技術なのである。
種馬を除くオスの馬は、去勢するのが基本である。
そうでなくては気が荒くなって、事故が頻発してしまう。


ところが日本は騎馬民族でなく、家畜文明として十分発達していないせいで、
去勢技術が無かった。

去勢技術が無かったせいで宦官が無く、
宦官が無かったせいで女官が後宮の仕事を仕切り、
女官が仕事を仕切ったせいで文字教養のある知的な女性が育ち、
文字教養のある知的な女性が上流階級の女性とされたおかげで、
全体の識字率が上昇したのである。


以上の理屈を簡略に述べると、
いささか失礼で、
いささか危険な表現になるため、
あえて長々と述べた次第である。


「馬の睾丸を抜いていたから、ユーラシアの女性は文字の学習が遅れた」
となるのである。

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