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2014年7月23日水曜日

アナと雪の女王 解説

「アナと雪の女王」のような子供向けの話、童話、民話、御伽噺というものは、
単純なだけにいかようにも作れてしまうので、
どの話も似通ったものになりがちで、
「大西物語」のような明快な物語の発展、継承のルートを特定するのになじまない。
なじまないが今回の作品はかなり確実に、
宮崎アニメを継承、発展していると言える。
だいたいの時系列でまとめてみる。



元ネタとなっているのは、
トトロ、もののけ、千と千尋、ハウルである。
以下簡単に説明する

1、姉妹の物語であるところは「となりのトトロ」に相似
2、ヒロインの髪の色が変わるところは「ハウルの動く城」に相似
3、姉妹の片方が失われて、片方がそれを探すのは「となりのトトロ」に相似
4、幼少期の記憶の片隅にある、オラフ(雪だるま)に再会する。
幼少期の記憶に再会するのは「千と千尋の神隠し」に相似
(トロールとの再会も同様)
5、アナを送り届けて一度アレンデールから離れたクリストフが、
吹雪を見てアレンデールに引き返す様子、
およびその途中でトナカイのスヴェンと離れるさまは、もののけのアシタカとヤックルに相似
6、アナに手に魔力が徐々に浸透するさまはアシタカの手に呪いが浸透する様に相似
7、凍りついたアナがエルサの愛で徐々に解凍されてるくさまは、
荒廃した山がシシ神の死で徐々に若草が芽吹いてゆく様に酷似
8、最終的にエルサが超自然の力と共存できるようになったのは、トトロに相似

一つや二つでは「影響を受けた」と言いにくいが、
この数ならばほぼ確実に言えると思われる。
ディズニーは宮崎アニメを十分に研究し、消化し、
自家薬籠中のものとした。
七人の侍と荒野の七人、
ジャングル大帝とライオンキング、
甲殻機動隊とマトリックスのようなことが起こっている。

受動的だったディズニーのヒロインを、能動的なものに変える作業を、
宮崎アニメを下敷きにおこなったのだろう。
加えて本作品は、
姉妹の間に女性特有の微妙な緊張関係があるのを、表現できている。
これは宮崎アニメにはなかった。
女の子には千と千尋やトトロより、リアルで感情移入しやすい作品に見えるはずである。
男の子には不満足な作品かもしれないが、
映画の成功失敗のカギは大抵の場合女性消費者が握っている。

音楽も出来が良い。特に二重唱。
音楽は、実は日本映画の最弱点なのだが、
ジブリは久石の能力で、高品質な音楽の供給を受け続けれる幸運にあずかれた。
しかし久石も、二重唱のようなポリフォニックな曲は厳しいだろう。

個人的に宮崎アニメの成功の秘密は、
幼少期にトトロをテレビで見て、作風を十分すりこませることにあったと思っている。
その意味では、これは苦しくなった。
世界中の子どもが、この作品を何度もすりこまれることは、
ほぼ確実だからである。
トトロから25年、能動的な女の子のアニメという、ジブリが独占してきた大きな市場が、
ごっそり持っていかれそうな気配である。

弱点も無いわけではない

1、トロールが歌うシーン、ミュージカル映画では群舞のシーンということになると思うが、弱い
2、オラフは大変良いキャラクターだが、顔が可愛くない
3、クリストフが嵐の中を引き返すシーン、動画として弱い。
4、アナの解凍シーンも、もののけの緑の回復シーンに比べれば弱い
5、「愛」で全てを片付ける安易さ

しかし上気5点、いずれも致命的なものではない。








1 件のコメント:

  1. 「エルサの自己肯定」の氷のお城が地面から立ち上がるシーンは、トトロの夜、樹木が繁ってゆくシーンに相似でした。表に書き加えました。

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