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2019年9月6日金曜日

無税国家

世間では「無税国家は不可能」となっているようです。無税国家にしたから国家崩壊した事例でもあるのでしょうか、私は寡聞にして知りません。明快なサンプルもないのに断言する。トルストイの死の描写と同類です。せいぜい言えるのは「無税国家は有税国家より維持が難しい」くらいのはずです。難しいのはそれは事実ですが。

商品貨幣→金属貨幣→兌換紙幣→不換紙幣→電子信号と貨幣が進化するとして、

商品貨幣、例えば米の場合には徴税がなくても流通できます。食べれますから。
もっともこの通貨は発行が大変です。政府が大きな農家である必要あります。確かに難しい条件です。

金属貨幣の場合も同様です。政府が自前の鉱山もって、安定的に算出できれば無税国家は可能です。原材料に価値がある以上、コインにも価値があります。採掘費は当然コインで支払えます。ただ通貨私鋳を防止する警察が必要になりますから、商品貨幣よりさらに維持が難しいです。国家というか、政府が大きくなります。

兌換紙幣はさらに難しくなります。ようするに社会的道具立てがより大きくなる。
仮に徴税するとしても商品貨幣→金属貨幣→兌換紙幣→不換紙幣→電子信号と進化するにつれて維持は難しくなります。道具立てがたくさん必要になります。それを充実させてきたのが人類史です。だからsuicaに入った電子信号を皆信用している。電子信号のちからというより、道具立ての力です。

現代の貨幣制度でも、全銀システム以上のシステムを構築し、かつ警察を壊滅させなければ、無税でもやはり円が流通してゆきます。貨幣が電子信号となってから製造というか発行の手間は大幅に減りました。そのかわり道具立ては気が遠くなるほど充実させています。だから流通すると考えるのが自然です。無税だと耐久性はたしかに下がる。しかしその分さらに道具を充実させればよいだけのことです。ボトルネックであった発行の手間がない分、そちらに集中できます。

なに、ドルのほうがよい?国内で買い物できないんじゃ仕方がありません。やはり円が流通します。無税のほうがシステムとしては脆くなりますが、成立不能とは言い切れない。言い切る根拠がない。

根拠がないのになぜ言い切るか。おそらく主流派の「そんなことをすればハイパーインフレが」という恐怖と同じメンタリティーがMMTの中にもあって、それが「無税国家は存続不能」という形で現れるのであろうと思います。原因は同じ、表現形が違う。

原因は「貨幣」の特質にあります。貨幣は信用の道具ではありません。不信の道具です。だから貨幣の扱いには正体不明の恐怖が付着します。音楽の逆です。不信も信用の一種と言えなくもありませんが。




コミュニケーション・サークル【貨幣・言語・音楽】

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