人間失格の主人公は天皇である。
すくなくとも第二の手記、第三の手記は歴史年表構成になっている。
(第一の手記は、神話などが入り混じって明快ではない)
少なくとも太宰は、
「誰かがこれを読んでくれる」
と思って書いた。
私見では、三島由紀夫は読めた痕跡がある。
(豊饒の海四部作は、人間失格的な構成を持つ)
太宰はそれを文中で表現している。
青文字で書いている、
コメとトラ、シノムニとアントの章である。
逆の読み方をしろ、と。
そろそろ太宰の意図を、世間一般が理解してあげるべきだと思う。
原爆投下と、御前会議での聖断は、
(若干不謹慎な言い方かもしれないが)
日本の歴史の、ピークである。
日本の歴史の最大のドラマが、あの数日間にある。
それを
原爆投下=堀木の優しい微笑
聖断=モルヒネの拒否
と表現した。
「ヨシ子は着換の衣類をいれてある風呂敷包を自分に手渡し、それから黙って帯の間から注射器と使い残りのあの薬品を差し出しました。やはり、強精剤だとばかり思っていたのでしょうか。
「いや、もう要らない」
実に、珍らしい事でした。すすめられて、それを拒否したのは、自分のそれまでの生涯に於いて、その時ただ一度、といっても過言でないくらいなのです。自分の不幸は、拒否の能力の無い者の不幸でした。すすめられて拒否すると、相手の心にも自分の心にも、永遠に修繕し得ない白々しいひび割れが出来るような恐怖におびやかされているのでした。けれども、自分はその時、あれほど半狂乱になって求めていたモルヒネを、実に自然に拒否しました。ヨシ子の謂わば「神の如き無智」に撃たれたのでしょうか。自分は、あの瞬間、すでに中毒でなくなっていたのではないでしょうか。」
このフレーズは、日本史上最大の瞬間であると同時に、
日本文学最大の瞬間であると思う。
ページ
2015年4月8日水曜日
2014年12月22日月曜日
銀河鉄道の夜・解読4
3回出てくる言葉を、
それぞれ「模型・現物・抽象」あるいは「大・中・小」で分類すると、
以下のようになる。
あんまり綺麗な図にならない。
無念である。
解読という意味ではこのへんがそろそろ限界である。
なにしろ未完成作品だから。
以下は私の妄想である。
この小説には「三角標」という言葉が13回も出てくる。
「鉄道」などの言葉が「3回」づつ出現することからも、
全文が「3」にこだわっているものであることは確実である。
そういえば鳥取りの人も狩猟の際に足をきっかり60度に開いている。
これはおそらく人間三角標である。
そして私見では、3という数字、および三角標はおそらく三位一体教義を表現している。
ざっと解釈を説明すれば、
1)天気輪の柱が変形して三角標になった。
本文中
「そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、
しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました」
という部分である。この直後ジョバンニは銀河鉄道に乗車している自分を発見する。
2)天気輪の柱は「法華経」で言う多宝塔である。
3)三角標はキリスト教で言う三位一体教義である。
4)ただし、この三位一体教義は、正教会での三位一体ではない。
正教会の(本来の)三位一体教義は、私の解釈では
父:脳
子:視覚
精霊:聴覚
である。
ニケア信条を読み解く 参照
一方カトリックの三位一体教義は、私の解釈では
(あるいは私の考える賢治の解釈では)
父:大(抽象)
子:中(現物)
精霊:小(模型)
である。
「フィリオクェ問題」参照
カトリックの三位一体教義ならば、「銀河鉄道の夜」に整合的である。
5)「銀河鉄道の夜」は北十字と南十字の描写に見られるように、
一見キリスト教に寄った作品である。
しかし天気輪の柱が変形して三角標になる、
つまり多宝塔が変形して三位一体教義になることかわわかるように、
あきらかに賢治の法華経信仰を普遍化してゆくものとして描かれている。
以上で「銀河鉄道の夜」解読を終わる。
想像以上にマニアックで濃い作品である。
人間コンピューター賢治にも、
あまりにも濃すぎてついに完成出来なかった。
しかしこういう作品を構想しようとすることじたい、
かれの極端な文章能力の高さを証明している。
感触的にはタルコフスキーや宮崎駿よりも堀辰雄よりも濃い。
私が似ている感触を持つのはドストエフスキーくらいである。
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それぞれ「模型・現物・抽象」あるいは「大・中・小」で分類すると、
以下のようになる。
あんまり綺麗な図にならない。
無念である。
解読という意味ではこのへんがそろそろ限界である。
なにしろ未完成作品だから。
以下は私の妄想である。
この小説には「三角標」という言葉が13回も出てくる。
「鉄道」などの言葉が「3回」づつ出現することからも、
全文が「3」にこだわっているものであることは確実である。
そういえば鳥取りの人も狩猟の際に足をきっかり60度に開いている。
これはおそらく人間三角標である。
そして私見では、3という数字、および三角標はおそらく三位一体教義を表現している。
ざっと解釈を説明すれば、
1)天気輪の柱が変形して三角標になった。
本文中
「そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、
しばらく蛍のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました」
という部分である。この直後ジョバンニは銀河鉄道に乗車している自分を発見する。
2)天気輪の柱は「法華経」で言う多宝塔である。
3)三角標はキリスト教で言う三位一体教義である。
4)ただし、この三位一体教義は、正教会での三位一体ではない。
正教会の(本来の)三位一体教義は、私の解釈では
父:脳
子:視覚
精霊:聴覚
である。
ニケア信条を読み解く 参照
一方カトリックの三位一体教義は、私の解釈では
(あるいは私の考える賢治の解釈では)
父:大(抽象)
子:中(現物)
精霊:小(模型)
である。
「フィリオクェ問題」参照
カトリックの三位一体教義ならば、「銀河鉄道の夜」に整合的である。
5)「銀河鉄道の夜」は北十字と南十字の描写に見られるように、
一見キリスト教に寄った作品である。
しかし天気輪の柱が変形して三角標になる、
つまり多宝塔が変形して三位一体教義になることかわわかるように、
あきらかに賢治の法華経信仰を普遍化してゆくものとして描かれている。
以上で「銀河鉄道の夜」解読を終わる。
想像以上にマニアックで濃い作品である。
人間コンピューター賢治にも、
あまりにも濃すぎてついに完成出来なかった。
しかしこういう作品を構想しようとすることじたい、
かれの極端な文章能力の高さを証明している。
感触的にはタルコフスキーや宮崎駿よりも堀辰雄よりも濃い。
私が似ている感触を持つのはドストエフスキーくらいである。
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2014年12月20日土曜日
銀河鉄道の夜・解読3
前回述べたごとく「3回出現する言葉」に注目すると、
以下のような表ができる。
ただし末尾のように分類しきれないものも残る。
未完成品だから仕方が無い。
順に説明する。
1)川
一、午后の授業 (授業で説明される模型の
天の河)
七、北十字とプリオシン海岸 (実際に手に触れる天の川)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラが溺れた川)
2)レンズ(前回説明済み)
3)紙
二、活版所 (活版所の人から渡されるメモ)
九、ジョバンニの切符 (十字を書いてある切符)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラの父が受け取った手紙)
4)鉄道(前回説明済み)
5)工事
三、家 (模型の鉄道工事)
七、北十字とプリオシン海岸 (発掘工事)
9-6 ソ連の発破と双子の星 (架橋工事)
6)赤い玉
三、家 (ジョバンニが家で食べるお姉さんが作った料理のトマト)
9-3 リンゴ (燈台守に貰うリンゴ)
9-7 蠍の炎 (さそり座のアンタレス)
7)船
四、ケンタウル祭の夜 (からすうりの船(灯篭流し)
9-2 タイタニック死者の乗車 (タイタニックとおぼしき船)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (ザネリとカンパネルラの乗った船)
8)溺死
9-2 タイタニック死者の乗車 (タイタニック乗客の溺死)
9-7 蠍の炎 (井戸に落ちたさそりの溺死)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラ溺死)
9)光と影
四、ケンタウル祭の夜 (街灯とジョバンニの影)
七、北十字とプリオシン海岸 (海岸への階段での二人の影)
八、鳥を捕る人 (甲虫の光と影)
10)平面化
七、北十字とプリオシン海岸 (牛の化石の発掘。みかけ上牛が平面化している)
八、鳥を捕る人 (鳥を採集すると平面化してお菓子になる)
9-7 蠍の炎 (さそりが平面化してさそり座になる)
11)牛
七、北十字とプリオシン海岸 (牛の化石)
9-8 ほんとうの神様 (おうし座(ふたごの星)
9-10 牛乳の入手 (母牛と子牛)
12)狩猟
八、鳥を捕る人 (ともかくも鳥の狩猟)
9-5 新世界交響楽 インディアン (弓矢による狩猟)
9-7 蠍の炎 (イタチによるさそりの狩猟)
以上が「3回出現する言葉」で私が発見できたものである。
以下「それらしい言葉なのだが3回ではないもの」を説明する。
まず2回出現するもの
ゆるい服
二、活版所 (ゆるい服の人、ジョバンニの職場のボスらしき人)
9-4 かささぎ 孔雀 渡り鳥 ゆるい服の人(鳥の交通整理)
ミルク
一、午后の授業 (天の川をミルクに例える)
9-10 牛乳の入手 (お母さんのためのミルク)
お菓子
二、活版所 (お母さんのための角砂糖)
八、鳥を捕る人 (鳥の菓子)
4回出現するもの
母のところに行く
9-8 ほんとうの神様 (タイタニックの死者が母の所へ行く)
9-9 石炭袋とカンパネルラの消滅 (カンパネルラが母の所へ行く)
9-10 牛乳の入手 (子牛が母牛の所へ行く)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (ジョバンニが牛乳を持って母の所へ行く)
もうひと頑張りで全て3回にそろえられそうだが、
あくまで未完成なのである。
しかしここまで緻密に組み立てただけでも、たいしたもんなのである。
さてそこで再び鉄道を考える。
4)鉄道
三、家 (模型の鉄道)
五、天気輪の柱 (現実の鉄道)
六、銀河ステーション (銀河鉄道)
鉄道は3回登場する。
家でジョバンニはカンパネルラ宅での鉄道模型遊びについて言及する。
天気輪の柱でジョバンニは遠くの列車を見る。
銀河ステーションでジョバンニは銀河鉄道に乗り込む。
模型、現実、抽象の3種類の鉄道が登場する。
小、中、大の3種類と言っても良い。
あるいは川
1)川
一、午后の授業 (授業で説明される模型の天の河)
七、北十字とプリオシン海岸 (実際に手に触れる天の川)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラが溺れた川)
模型の川、天の川、実際の川である。
小、大、中、の3種類ある。
つまり作品中の3回出現イメージは、
模型、現実、抽象、
いいかえれば、
小、中、大の3種類で統一されているのではないかと思われる。
以下のような表ができる。
ただし末尾のように分類しきれないものも残る。
未完成品だから仕方が無い。
順に説明する。
1)川
一、午后の授業 (授業で説明される模型の
天の河)
七、北十字とプリオシン海岸 (実際に手に触れる天の川)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラが溺れた川)
2)レンズ(前回説明済み)
3)紙
二、活版所 (活版所の人から渡されるメモ)
九、ジョバンニの切符 (十字を書いてある切符)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラの父が受け取った手紙)
4)鉄道(前回説明済み)
5)工事
三、家 (模型の鉄道工事)
七、北十字とプリオシン海岸 (発掘工事)
9-6 ソ連の発破と双子の星 (架橋工事)
6)赤い玉
三、家 (ジョバンニが家で食べるお姉さんが作った料理のトマト)
9-3 リンゴ (燈台守に貰うリンゴ)
9-7 蠍の炎 (さそり座のアンタレス)
7)船
四、ケンタウル祭の夜 (からすうりの船(灯篭流し)
9-2 タイタニック死者の乗車 (タイタニックとおぼしき船)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (ザネリとカンパネルラの乗った船)
8)溺死
9-2 タイタニック死者の乗車 (タイタニック乗客の溺死)
9-7 蠍の炎 (井戸に落ちたさそりの溺死)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラ溺死)
9)光と影
四、ケンタウル祭の夜 (街灯とジョバンニの影)
七、北十字とプリオシン海岸 (海岸への階段での二人の影)
八、鳥を捕る人 (甲虫の光と影)
10)平面化
七、北十字とプリオシン海岸 (牛の化石の発掘。みかけ上牛が平面化している)
八、鳥を捕る人 (鳥を採集すると平面化してお菓子になる)
9-7 蠍の炎 (さそりが平面化してさそり座になる)
11)牛
七、北十字とプリオシン海岸 (牛の化石)
9-8 ほんとうの神様 (おうし座(ふたごの星)
9-10 牛乳の入手 (母牛と子牛)
12)狩猟
八、鳥を捕る人 (ともかくも鳥の狩猟)
9-5 新世界交響楽 インディアン (弓矢による狩猟)
9-7 蠍の炎 (イタチによるさそりの狩猟)
以上が「3回出現する言葉」で私が発見できたものである。
以下「それらしい言葉なのだが3回ではないもの」を説明する。
まず2回出現するもの
ゆるい服
二、活版所 (ゆるい服の人、ジョバンニの職場のボスらしき人)
9-4 かささぎ 孔雀 渡り鳥 ゆるい服の人(鳥の交通整理)
ミルク
一、午后の授業 (天の川をミルクに例える)
9-10 牛乳の入手 (お母さんのためのミルク)
お菓子
二、活版所 (お母さんのための角砂糖)
八、鳥を捕る人 (鳥の菓子)
4回出現するもの
母のところに行く
9-8 ほんとうの神様 (タイタニックの死者が母の所へ行く)
9-9 石炭袋とカンパネルラの消滅 (カンパネルラが母の所へ行く)
9-10 牛乳の入手 (子牛が母牛の所へ行く)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (ジョバンニが牛乳を持って母の所へ行く)
もうひと頑張りで全て3回にそろえられそうだが、
あくまで未完成なのである。
しかしここまで緻密に組み立てただけでも、たいしたもんなのである。
さてそこで再び鉄道を考える。
4)鉄道
三、家 (模型の鉄道)
五、天気輪の柱 (現実の鉄道)
六、銀河ステーション (銀河鉄道)
鉄道は3回登場する。
家でジョバンニはカンパネルラ宅での鉄道模型遊びについて言及する。
天気輪の柱でジョバンニは遠くの列車を見る。
銀河ステーションでジョバンニは銀河鉄道に乗り込む。
模型、現実、抽象の3種類の鉄道が登場する。
小、中、大の3種類と言っても良い。
あるいは川
1)川
一、午后の授業 (授業で説明される模型の天の河)
七、北十字とプリオシン海岸 (実際に手に触れる天の川)
9-11 カンパネルラ溺死と父帰還の予感 (カンパネルラが溺れた川)
模型の川、天の川、実際の川である。
小、大、中、の3種類ある。
つまり作品中の3回出現イメージは、
模型、現実、抽象、
いいかえれば、
小、中、大の3種類で統一されているのではないかと思われる。
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