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2009年5月19日火曜日

「カラマーゾフの兄弟」をよみとく 2

気になって第二編「場違いな会合」の、
長老と女性信者の面会シーンを詳しく見てみる。
長老は5人の一般女性と、
一人の貴婦人(とその娘)に面会する。
順を追ってみてゆくと、

一人目は癲狂やみで、ヒステリーを起こしている。
長老はストールをかけてやる。ヒステリーは治まる。
6キロくらい先の村に住んでいて、以前も来たことがあるらしい。

二人目は300キロ遠方から来た人で、
子供が死んでしまった悲しさに耐えられなくなり、
亭主をほうっておいてここに来た。
長老にさとされて、心が癒され、亭主が心配になって家に帰る。

そらきた。
いきなりこれだ。
これは絶対に臭い。
一人目が6キロ先に住んでいて、
二人目が300キロ遠方の人。
このキロ数だけでも、非常に意図的な匂いがプンプンする。
詳細すっとばして、
続けて住所から僧院への距離だけを注目する。

三人目はこの町の住民。
四人目は500キロ遠方。
五人目は6キロ。

ほら、完璧ではないか。
5人の庶民の女性信者たちの、
住所と僧院からの距離は、
意図的に対称的に設定されているのである。

一人目6キロ
二人目300キロ
三人目0キロ
四人目500キロ
五人目6キロ

300と500の違いこそあれど、
きれいに対称になっている。
一人目と五人目は対になっているし、
二人目と四人目は対になっている。
ちょっとしたエピソード的な目立たない箇所だけど、
ドストエフスキーはここまで考えて小説を書いていたのである。

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