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2009年5月21日木曜日

「カラマーゾフの兄弟」をよみとく 3

そこで僧院につどったこの5人の女性を、
もう少し詳しく見てゆく。

一人目は癲癇の女性。
二人目は子供が死んだ女性。
三人目は、失踪した息子に帰ってきて欲しくて、過去帳に息子の名を記載するかどうかゾシマに相談する。ゾシマに説得されてやめる。ゾシマは「近いうちに消息がある」と予言する。
四人目は夫を殺した女性。ゾシマに罪は許されると言われる。
五人目は元気な農婦。ゾシマにお金を渡して、ゾシマを喜ばせる。

居住地の僧院からの距離の区分により、
一人目と五人目は、ワンセットであり、
二人目と四人目はワンセットであり、
三人目は単独でセットをつくっていることが明らかになっている。
この3つのセットのそれぞれの属性を見てみる。

一人目と五人目のセットは、「癲癇もちで元気」
なんだかわからない。

二人目と四人目のセットは、「子供が死んで、夫を殺した」
これは確かにセットであって、ようするに陰惨組である。

三人目セットは、「迷っていたが説得に従う」

そして、カラマーゾフの読者ならば既にご理解いただけたと思うが、
どうも一つ目の「癲癇もちで元気」なのは、
アリューシャに近いキャラクターである。

二つ目の「子供が死んで、夫を殺した」は、
イワンに近いキャラクターである。
実際には母が死んで父を殺した、となるのであるが。

三つ目は恐らく、ミーチャなのであろう。
小説の最後でミーチャは、シベリア送りになるところを、
アリューシャの説得で脱獄してアメリカに行こうとするし、
そのとき「俺は必ず戻ってくる」と宣言する。

この、物語の比較的最初の部分に出てくる、
五人の夫人の描写は、実に、
小説における三人の振る舞いを巧妙に暗示しており、
全編の雛形、あんちょこ、あるいは要約に近いものになっているのだ。
なんというか、ドストエフスキーの恐ろしいまでの構成力、筆力である。

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