のろいと虫と印鑑について、
おそらく多くの人々が理解できなかったのではないかと思う。
1、銭婆は苦しんでいるハクを見て、
「この龍はもう助からない。ハンコには盗んだものが死ぬように呪いをかけてある」という。
2、ハクが悶絶していると釜爺が「なにかが命を食い荒らしている」と言う。
3、吐き出した印鑑と虫を見て釜爺が「これだ」と言う。
4、印鑑についている虫を千尋は踏み潰す
5、千尋が銭婆のところに印鑑を返しにいって、ハクを助けてくれるよう頼むと宣言
6、銭婆に印鑑を返した時、「守りのまじないが消えているね」と言われ、ハッと気づいて
「あの虫踏みつぶしました」と言う。すると銭婆は笑って、
「其の虫は妹が弟子を操るために龍の腹に忍び込ました虫だ」と言う。
さてここで質問。
ハクを苦しめていたのはなんなのだろうか。
呪いか?虫か?
状況を整理してみよう。
1、ハクは印鑑を盗む前から虫を忍び込まされていたはずである。
それによって顔色が悪くなったりしたかもしれないが、致命的ではなかった。
2、ハクは印鑑を盗んで死の呪いを受け、悶絶して苦しんでいた。
3、千尋のくれた苦団子を飲んで、印鑑と虫を同時に吐き出した。
4、虫は千尋に踏み潰された。
つまり、死の呪いを最終的に受けたのは、千尋が踏みつぶした虫である。
湯婆婆がハクのお腹に忍び込ませた虫である。
苦団子は
銭婆婆の呪いを、湯婆婆の虫に転嫁させた。
河の神の霊力と千尋のひとふみによって、
ハクは
湯婆婆の支配の呪縛からも、
銭婆婆の死の呪いからも、開放されたのである。
もっとも虫は呪いをうけているから、
千尋に踏まれなくてもどうせ死んでしまう運命なのだが。
ちなみにハクの盗んだ印鑑は、
元来契約の書き直しに使用されるものである。
絵コンテではそのように記載されている。
契約を結ぶ主体は湯婆婆であるから、
湯婆婆と銭婆婆で、
契約の締結と契約の書き直しを、
役割分担していると考えて良い。
ちょうど司法立法行政の三権分立のように、
あるいは政府と中央銀行の役割分担のように。
そう、湯婆婆とは冥界の政府であり、銭婆婆は冥界の中央銀行である。
だから銭婆婆と名前がついている。
湯婆婆は王のように、政府のように、従業員を大量に使ってる。
銭婆婆は従業員は居ないが、湯婆婆にまさるとも劣らない魔力を持っている。
湯婆婆は銭婆婆の権力を簒奪しようとハクに盗みをさせたが、
それはあえなく失敗した。
この二人は、劇中語られているように、
「二人で一人前」である。
千尋が門の前でみた石人のように、
一つの像に、顔が二つあるのである。
と、そろそろ本題に入りそうだが、次回に続く。
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