時代的に船の発明は馬の制御に先立つ。
馬というものは、はなかなか制御できなくて、
まずは戦車(要するに馬車)という形態で、
次に乗馬することができるようになったのだが、
乗馬できるようになったのはかなり後で、
殷周交代の牧野の戦いではすべて戦車、
騎乗できるようになったのは春秋時代以降である。
それ以降馬の制御が軍事力、すなわち権力に直接結びつくようになり、
射程距離が長い銃火器の発明までそれは続いたのだが、
馬の登場以前の最先端テクノロジーは、
船の製作であった。
だから、メソポタミア下流域で最初に文明というか、
王権が発生している。
下流域文明はすぐに中流域、上流域の連中に征服される。
最初は船を制御できた連中が権力を握ったが、
次に馬を制御できた連中に征服された、という意味なのであろう。
権力の変化は交通手段のテクノロジーの発展による変化であった。
逆に言えば、
馬が制御できる以前の文明では、
船が最新テクノロジーで、
良い船を作れる人間がすなわち王者であった。
ところで船の原初形態は丸木舟である。
やがて発展して、板を張り合わせたものになるのだが、
「箱舟」は名前からして、板を張り合わせたものと類推できる。
ノア(という人はおそらく実在しないのだが)が箱舟を作ったとき、
それは最先端のテクノロジーであったはずである。
板を組み合わせて、大きな大きな船を作れるようになったのである。
板の製造、接着など、さまざまな新開発技術は、
当時の他の部族を圧倒したはずである。
交易効率が格段に違うから、
富の蓄積により大きな権力を身につけた。
ノアはその船に全ての種族を乗せた。
ということは、ノアはテクノロジーによって王となり、
全ての生物の中間始祖を主張できる権威を身につけた、
という意味なのである。
箱舟神話は、
ノアという義人の物語ではなく、
王権の物語であったのである。
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