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2014年1月20日月曜日

死食

スイカに塩を振ると甘みが増すように、
生に死を振りかけると、生の味わいが増すようである。
死は最高の生のスパイスらしい。

タイ人は死体が好きである。
普通の女の子が、死体の写真を見ながら、普通に食事をする。
以前、バンコクの交通事故の事故処理ボランティアさんをテレビ番組を見たことがある。
毎晩スタンバっていて、連絡があると事故現場に直行する。
「人命救済に情熱がありそうには見えないけど、
この人たちなんでこんなことをしているのか」
と疑問に思いながら見ていたが、
今にして思えばあのボランティアのおじさんたちは、
死体フェチ欲求を満たす為に活動していたのであろう。

東南アジア奥地のある部族では、
高位の坊さんが死ぬと、丸焼きにして村全体で肉を食べる。
食べると高貴な精神を受け継げる、という能書きらしい。
昔写真を見たことがあるが、そんな能書きよりも、
上体を起こした状態で黒焦げになっている死体の皮膚から、
指で皮膚をつまんで口に入れている子供たちの、
金属面のような無表情な顔と、
まるでポッコリ穴が開いたような目の暗さが、
強く印象に残っている。

宇都宮および浜松市民には申し訳ないが、
餃子というもの、とくに中国で正月にかならず食べる水餃子は、
私には、胎児に見えてしょうがない。

キリスト教では、
死体が貼り付けられたフィギアを、
ネックレスにして胸に垂らして、
ことあるごとにそれに口をつける。
「とりて食え、わが肉なり」
「とりて食え、わが血なり」
その死体由来のものであると宣言されたパンとぶどう酒を摂取する行為が、
聖餐と呼ばれている。

以上のような視点から、
本邦における特攻隊物語の流行を考察すべきだと思う。
「風立ちぬ」のゼロ戦のパイロットの、
微妙な表情と微妙な腕の上げ方ひとつで、
ああ、これから特攻にゆかれるのだなとわかる私達。

その時、えもいえぬ「うずき」のようなものを感じるとしても、
別に恥ずかしくもなく、タブーでもない。
人類普遍のスパイス欲求にたいする、
日本人なりの、充足の方法論なのである。

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